【詩日記】 こぼれる

こぼれる
 
 
 心から液体がこぼれました
 月からこぼれた雫が湖に波紋を描くみたいに
 湖畔では髪の長い女が花を見つめています
 僕も真似をして湖畔で花を見つめました
 女はうっすらと発光していました
 
 雨の音がうるさく
 その日はついに愛が聞こえませんでした
 土砂降りの雨で全て流してなかったことになんてことはなかったんです
 だから僕は今一人を噛み殺していて
 まるで二人のふりをして日々をこぼしています
 あの日から雨が降るたびに
 僕は傘をうまくさせないでいます
 錆びついていてうまく開かないのです
 
 駅は安全ではありません
 すれ違う人がみんなそれなりに幸せに見えました
 その幸せな顔つきが全ての僕の存在をこの世にいないことにしているようでした
 人目を避けて逃げるように家に帰ります
 全部ガラガラの普通電車で帰ります
 僕はそんなにも気持ち悪いのでしょうか
 次の春に湖畔にまた花が咲いたら僕はもう一年は生きることを許されるでしょうか

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