見出し画像

蚊は人類との戦争を望んでいるか/一割嘘日記240918

簡単な例え話をしましょう。
あなたはバーバリアンです。

日本に現存する最古の「バーバリアン」の資料。ニンジャ・ドラゴン・デーモンなどの暗黒存在から愛する家族を守るため奔走した戦士とされる。

あなたはバーバリアンなので、血液、人を叩くこと、奴隷に棒を回させるやつ、遥かに目上の上司への積極的なパワハラ、暖かい家庭、最新式のグラボなどを好みます。
それらを勝ち取るには、生存競争という名の闘争に勝ち続けなければなりません。簡単な話ですね。
では、戦いに明け暮れ、心臓の鼓動を使い果たすその時まで勝ち続ければどうなるか?
別にあなた自身はどうもなりません。ただあなたのような振る舞いが種族の手本なのだ、と同族が学び、他のバーバリアンたちもそのように振る舞います。血液、人を叩くこと、奴隷に棒を回させるやつ、遥かに目上の上司への積極的なパワハラ、暖かい家庭、最新式のグラボを尊重する種族に塗り替わっていくわけです。最悪のウェブトゥーン?
これが進化の仕組みです。死ななかった個体を真似することで生物は自然淘汰から免れるのです。

ではあなたが蚊ならどうでしょうか?

蚊について専門家にいただいた資料。空を飛び、鋭い棒状の武器で人間を襲撃し、血を流させることを生業としている。

まずフォーマットはどうあれ生き物なので、当面の目標は種を存続させることです。生物はカイロソフトの経営SLGと違ってシビアです。
蚊は花の蜜でも吸っていれば生きてはいられますが、種の存続、つまり産卵のためにはたんぱく質が必要で、そのために血液が必要です。従って、あなたがたのような仕方なくバーバリアンを襲撃せざるを得ないのです。被害者面をするな。
では、蚊が生存競争に完全勝利した世界では何が起こるのでしょうか?

まず、当然ながら人類は隷属となっているでしょう。たんぱく質、つまり血の安定した供給は個体数の増加に貢献し、種の繁栄に最も直接的に繋がります。
また、食料問題の解決のため、蜜が得られる植物は爆発的に増大するでしょう。逆に食料にもならない上にアレルギーを引き起こすスギなどは、暴徒化した花粉症の蚊によって地面に倒されてしまいます。倒された杉の木は、ただちに吸血鬼などをひっぱたいてつぶすために使われます。
時折人間による反乱が起きますが、鎮圧のためにたくさんの蚊が襲ってきてくるのでとても嫌な気持ちになり、彼らはすぐに諦めてしまいます。これを学習性無力感と呼びます。

あなたが蚊だとして、バーバリアンに撃墜されたり、高い知能を誇るギリシャ人が開発した殺虫剤による死刑執行のリスクがある世界と、食い物にも子供にも困らない世界、どちらが魅力的ですか?
まあ別にどちらでもないですよね。

これは例え話に過ぎませんでしたが、どの生き物も繁栄を願っているはずです。血液、人を叩くこと、奴隷に棒を回させるやつ、遥かに目上の上司への積極的なパワハラ、暖かい家庭、最新式のグラボなどを求めるのは、地球上の生物の共通の願いなのでしょう。
我々人間も、飛んで火に入る小さな羽虫も、目指すところが同じだと思うと不思議な気持ちになります。

三割六分と申します。
この日記には嘘が一割含まれています。

蚊は人類との戦争を望んでいるか

終わりごろですが、夏ですね。
三割六分家は地理上蚊が発生しやすいのですが、一昨年からアースノーマットを導入しています。
これは手のひらサイズのスプレーで、一度プッシュして噴射した空間に対し、蚊やハエなどの害虫にのみ効果のある運命への干渉を引き起こし、空間内での対象が生存できる確率を0%に引き下げる力を持っています。――領域展開。
実際効果はてきめんで、刺されたあとにムカついてプッシュみたいな受動的なアクションをしない限りは我が家で蚊に刺されることはなくなりました。昔、アクションゲームをしている時に、敵にぶん殴られてイラついた後になってからスーパーアーマーの技を使うきらいがあって、悪癖だぞと詰められたことがあります。

※当アカウントのnoteは全て個人による完全非営利の執筆です。これは嘘ではありません。

しかし、何事にも完璧はありません。
想像してみてください。そこに現れると思っていない場所に現れる蚊を。
例えば……デーモンにお腹を襲撃されている最中のお手洗いなど。あなたは動けない(運命干渉スプレーを取りに行けない)し、狭い密室で、追い払いようが無いときなど。
私の実体験ですが、先日お風呂場で襲われました。訳あって両手は塞がれてるし目を開くわけにもいかないし、しかしモスキート音だけは聞こえるのです。隣人が嫌がらせで流してるとかじゃないですよ。確かに近寄ったり遠ざかる気配を感じるのです。
結果刺されることはなかったです。蚊って扇風機に吹かれれば飛んでいく腰抜けなので、水でも同様だろうと思い、直ちにシャワーを浴びることにしました。恐らく私の身体に着地しても、体表を流れるシャワーに足元を掬われて流されてしまっていたのだと思います。信ずる蚊だったのでしょう。
あのまま湯船に浸かっていたら、肩から頭にかけてのみをたくさん刺され、ダークソウルとかに出てくるバケモンみたいになっていたかもしれません。今気づきましたが、せめて肩まで浸かってれば良かった。

蚊目線を想像してみると、砂漠で遭難して喉がカラカラなのに、オアシスに向かう全ての道が流砂で塞がれているような状態です。サヌビア砂漠でリュックが右往左往してるみたいに。
これが人間による仕業だとしたらどうですか。砂を操る特殊能力の持ち主があなたをオアシスへ向かわせんと、わざと嫌がらせをしてると仮定すると。
もう、腹が立ちますよね。即座に戦争ですよね。すみません、私のせいで蚊文明を怒らせてしまったかもしれません。

でもかゆいのは嫌だし。これも生存競争。かゆいのを嫌がる人間だけが生き延びられるとか、都度自分に言い聞かせ、地球に生きるあらゆる他の生き物に迷惑をかけないと、人間は生きていけないのです。
血液、人を叩くこと、奴隷に棒を回させるやつ、遥かに目上の上司への積極的なパワハラ、暖かい家庭、最新式のグラボ。そのどれもが、誰かに迷惑のかかるものなんですよね。

蛇足

脳直で文字を出力するような日記を心がけたいと思います。
それでは。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?