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『カグラバチ』レビュー

 皆さんどうもこんばんは、三時のおやつです。最近はゲームがあまりに楽しすぎて、背後に高く積まれた漫画の怨念を日々かみしめながら過ごしてます。
 さて、今回ご紹介させていただくのは『カグラバチ』(集英社/著 外 薗健)でございます。カグラバチといえば、前回レビューした『異世界サムライ』の記事でもご紹介させていただいたのですが、次に来るマンガ大賞2024におけるコミックス部門で1位を受賞したことで、知名度が一気に上がったのではないでしょうか。私も連載開始時から読ませていただいており、初めて読んだときは「くっそおもれえなこの漫画」とつぶやいてしまったことを覚えています。前置きはここまでにして、さっそくレビューしていきましょう。

 『カグラバチ』は外薗健先生の漫画で、週刊少年ジャンプで連載しています。コミックスは、現在3巻まで出版されており、今月に4巻が発売されます。
 あらすじは、主人公である六平千鉱(チヒロ)は、当時15歳で父である六平国重を師に持ち、日々日本刀作りの修行に明け暮れていました。六平国重は、15年前まで起きていた斉廷(せいてい)戦争を終わらせる要因となった、6本の妖刀を作った伝説の刀匠でした。普段は家事もからっきしなダメ親父なのですが、刀を作るときには職人としての本性を見せる親父から、ある時、刀を作るうえで向き合わなけれなならない覚悟はあるか問われ、チヒロは迷うことなく即答します。その出来事から数か月後、六平国重は何者かに襲撃され、命を落とします。さらに、国重が作った6本の妖刀も盗まれてしまいます。しかし、チヒロの手には国重が人生で最後に作った妖刀「淵天」が握られていました。そして3年後、父の復讐と、父が作った6本の妖刀を自らの手で回収するため、東京と舞台としてチヒロが様々な強敵と戦いを繰り広げていくストーリーとなっております。
 この漫画の面白ポイントは、一つ目は世界観です。妖術が存在する世界で、戦闘の主流は刀という、いうなれば、もし銃が発明されていなかったら、現代はどのような世界になっていただろうというif世界がぴったりはまるように、違和感なく構成されているところが最高です。刀が主流の世界だと、時代背景的に古くなってしまったり、または主人公が転生したりといったパターンになりがちですが、日本を舞台としている中で、服のスタイルがスーツであったり、建物がコンクリート製であったりなど、近時代的な空気がありながらも、その中に、ところどころ重要な建造物はふすまや畳を使用したような the 和室があったり、装飾が江戸までの日本に見られるような日本独特のものが使用されていたりなど、ここまで上手に今と昔を違和感なく混ぜ合わせているのが技術力の高さを感じます。二つ目は、チヒロ君の人物像です。15歳で父を殺され、そこから復讐を誓い3年間で妖刀を使いこなすまでに成長したチヒロ君の意志の強さと、たったの3年間でがむしゃらな努力によって培ってきた技術力が垣間見せる、技術力の幼稚さがうまいバランスで表現されています。具体的には、淵天の能力を使いこなしてはいるものの、妖刀としての真の力がまだ発揮できていなかったり、力の出力の加減がへたで戦闘後にばててしまったりなど、3年間にしてはよくやっているという感覚と、やはり修行不足だなという相反する感情が交互に込みあがってくるストーリー構成が素晴らしいです。三つ目は、相方であり父の友人だった「柴さん」の存在です。柴さんは、かつて日本政府直属の妖術師部隊の一員でしたが、そこを離れ、今はかつての友である国重の息子のチヒロ君を守るべく、サポーターとして一緒に行動している妖術師です。普段はよくおちゃらける性格の柴さんですが、情報収集能力・戦闘能力etcの高さが時折垣間見え、底の見えない謎人間さを発揮します。しかし、常にチヒロ君のことを第一に心配し、亡き友人に代わってチヒロ君を守ろうとする柴さんの人間性が全面的に表現されており、もし今後柴さんが裏切りでもしたら全読者が泣いてしまうんじゃないかと思わせるほど、柴さんの信頼度爆上げになる描写になっています。この柴さんの存在がストーリーに深みを持たせ、面白さが倍増しています。
 『カグラバチ』は、ジャンプ作品の時期代表作になるであろうと思わせるくらいはめっちゃくちゃ面白い漫画です!この記事をきっかけに是非お手に取っていただけたら嬉しいです。

 ここからは、客観的な評価をさせていただきます。この漫画を読んでて思ったのは、「刀って、なんでこんなに漫画と相性いいんだろうなあ…」という感想です。こうは言ったものの、実際は刀と漫画ってめちゃくちゃ相性悪いんですよね。なぜかというと、本編でも言ったように、刀を主流にしようとするとどうしても時代背景に制限が出てきてしまったり、日本を舞台としたり日本人を主人公にしなければいけなかったりなど実はとても難しいお題だと私は考えています。そんな中、ここまで刀をうまく主流としてストーリーを描き上げているのはすごいと感じました。ほめてばっかりなのもあれなので、この漫画のくせのある部分を上げますと、作画について、妖術の描画の仕方が少し読みづらいな、と感じました。基本的に薄いトーンを使用しない白黒の作画スタイルなのですが、戦闘時に黒の割合が多くなるシーンがあり、何が起きているかわかりずらいような場面がいくつかありました。また、動きの描写に関しても、テンポが速くなったり遅くなったりする傾向があり、きづいたら敵がバラバラになっていたりして、あまり漫画を読まない方にとっては読みづらいかもなと感じました。ですが、話数を追うごとにだんだん良くなっているように感じるので、今後に期待大です。次に来るマンガ大賞1位が納得の、超お勧めできる漫画なのでぜひお手に取っていただけたら嬉しいです!!

 最後まで読んでいただきありがとうございました。

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