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父とサイゼ。

通っていた中学校のさらに先、交差点の一角にサイゼリヤが出来たのは高校生の時だったと記憶している。


パッとサイデリア〜🎵しか知らなかった県民は、サイデリアとサイゼリヤの違いが分からないままそのカラフルな建物をチラチラと横目で見た。


イタリアンワインカフェレストラン……とは?
カフェなの?レストランなの?居酒屋なの?なんなの?と戸惑いを隠せない。


生まれも育ちも長野県。我こそ長野県民代表と自負している父はサイゼリヤの隣の鮨屋を贔屓にしていたものだから、建設途中から「また訳のわからんものを…」とぼやいていた。



そんな父とは対照的に、アンテナの感度の高い県民はオープン初日に並んでイタリアンな空間に吸い込まれていき、「シシリーフー」だとか「ミラノフー」とすっかりかぶれて帰ってくる。


流行り物はいつも最後に取り入れるタイプの私たち家族は隣の鮨屋の中にいて、漏れ聞こえてくるにぎやかな笑い声とミラノフーの響きを聞きながら緑茶をフーフーすすっていた。




ずいぶん時間が経ってから、私はやっとそのイタリアンなカフェレストランに足を踏み入れた。


すっかりサイゼ常連になった友人から勧められるままに注文した「たらこソースシシリー風」はシシリーがなんなのか分からないけれどものすごく美味しかった。たらこスパゲッティとは何かが違った。


「小エビのカクテルサラダ」はワイングラスみたいなのにサラダが入っているもんだと想像していたら全然違かった。エビにかかっている赤い粉がなんなのか分からないけれどものすごくおいしかった。ハッピーターンの粉と同じ役目をしているのかもしれない。



次来た時は「ミラノ風ドリア」を食べようと思いながら家に帰り、家族に自慢げに横文字を並べる。

「カクテルサラダとスィスィリー風のパスタがおすすめだよ?」






母が緑茶をぐいっと傾け、父がいも焼酎をドンっと机に置いた。

ごめん、そういうのは置いてなかったわ。



そういえば結局父は、たらこソースシシリー風を一度も食べずに旅立ったのだろうか?たらこスパゲッティ大好きだったから、きっと美味しかっただろうに。


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本田すのう │   書いて読む主婦noter
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