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テレビと喧嘩した。謝るからお別れなんて言わないで。

ある日、テレビと喧嘩した。
テレビは怒ってウンともスンとも言ってくれない。

ごめんよ、テレビの前で喧嘩して。
チャンネル争いはもうしないから。
どんどん横から線ぶっ刺して、あれもこれも映せと言わないから。
ご飯粒がついた手で、画面を触ったりしないから。
トミカを画面に投げつけたりしないから。



だからもう一度、楽しい声を聞かせておくれよ。
明るい顔を見せてくれよ。




……どんなに願っても、テレビは許してくれなかった。コンセントを抜き差ししても、上から肩を叩いてみても、テレビはもう私たち家族を見放したようだった。


2週間。
テレビはその顔に何も写さず、ただただ食事をする私たちの顔を反射する鏡のような存在となってしまった。クセでテレビのいる方を見ても、もう、笑ってくれない。テレビ。




『お別れ会をしよう』

長男が言った。




その日、テレビを飾り付けた。



長男が家族全員に「テレビに最後のメッセージをください」と短冊を配った。

みんなそれぞれ、テレビにむかってメッセージを書いた。


長男はテレビの前に食事をせっせと用意した。
まるで仏壇のようだった。




どんなチャンネルが好きだった、とか、ここに大きな手形がついてるね、とか言いながらテレビを磨いて、最後に写真を撮った。




13年間、私たちの視線を独り占めにしてきたテレビは、この日、我が家を去った。






新しいテレビは前のテレビよりずっと大きい。
YoutubeもPrimeVideoもリモコン一つで見れることに、子ども達は喜んでいる。

だけど今もなお、新しいテレビの横の壁には前のテレビへの短冊が飾られている。





テレビとのお別れをずっと書きたかったところに、てみさんの【テレビと喧嘩】というお題をいただきました!

喧嘩別れになってしまったテレビとの想い出を綴っています。てみさん、ありがとうございました✨


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