「インド在住」がよく聞かれる3つのこと
インド在住というと聞かれること。
学生時代からちょくちょくインドには色んな形で訪れてきた。バックパッカー、ボランティア、フィールドワークなど。大学卒業後、少しだけ営業の仕事をした後インドへ移住。コロナまで14年ほど住んでいた。
色んな場で初めましての挨拶でそんなことを話す。そして「インドに住んでいる」もしくは「住んでいた」というとよく聞かれる質問がある。質問する人の興味・関心によって内容はもちろん色々だが、質問に傾向はある。
治安について、食事について、カースト制度について、様々だ。ただ、その中でよく聞かれるものが。これは多いなぁというものの中で特によく聞かれるのはこの3つ。
3大質問
①「インドではご飯はいつもカレー?」
インドといえばカレー、というイメージがあるのだろう。毎食カレーなのか?朝からカレー食べているのか?全てのご飯がカレー味なのか?
この質問の背景にはカレー好きだけど毎食なら飽きないのか?全部の食事がカレー味でどうやって食べているのか。なんていう好奇心とそこはかとない心配が見て取れる。
②「インドに行くと大好きか大嫌いに分かれるって本当?」
インドは好きな人は何度も何度も訪れるほどはまる人がいる一方で、合わない人はトコトン合わない。真っ二つに分かれるのではないか。そんな噂が流れている。
好き嫌いがハッキリ分かれる、そんなイメージ。あの人は好きになるタイプであり、あの人は合わないからまず行かないだろう。行ったとしても二度と行きたくなるなるようなイメージ。
とんでもなく強烈な場所であるので、はまるか・拒絶かの二択しかないのではないか。そんな好奇心が見て取れる。
2009年に出版された「インドなんて二度と行くか!ボケ!!―…でもまた行きたいかも」という旅行記はそんなイメージに拍車をかけているかも知れない。
③「インドに行くと人生観が変わるってマジ?」
そして3つめがこの質問。ちなみにこの問いは、②の好き嫌いがハッキリ分かれるということとも繋がっているかも知れない。
極端な場所だからこそ行くことで人生への観点そのものまで大きく変わってしまうのではないかと。
この質問をされる方に、その背景に2つの思惑が見え隠れしているように感じている。どこかポジティブな思惑の場合は
「今よりももっと本当の生き方がきっとあって、インドに行くとそれまでの固定観念が外れることでそんな生き方に繋がれるのではないか」
というもの。
一方どこかネガティブな思惑として感じるのは
「インドに行って変な精神性に触れたりして、地に足がついていないお花畑のような夢見る人生を送る人いそうだね」
そんなどこか小馬鹿にするようなイメージ。
有吉もこんな発言をしていた。
「インドに行って人生観が変わったなんていうヤツは、日本でもたいした人生を送っていない」
答えが難しい
これらの3つの質問にどう答えるのか。真面目に答えようとすると、実はどれもちょっと難しい。どう難しいのか。
毎食カレーなのか?
まずカレーについては日本のカレーをイメージしているとしたら、そんなことはない。というよりも日本のカレーはインドにはほとんどない。ルーを作ったカレーはほとんど見られない。
スパイスを使った食べ物が全てカレーだとしたらある程度当てはまるが、そうなると世界にはカレーばかりになってしまう。
そう考えると、そもそもカレーとはなんぞや?という問いから始めなくてはいけないから。
好き嫌い分かれるか?
この問いについては比較対象がなければ答えられない。確かに例えばタイと比べるとその傾向はあるかもなと思う。というのもタイを訪れて大っ嫌いになったと言う人はインドに比べて少ない、というのは実感している。
世界旅行をした人達から話を聞いていて、確かに特に好きな国、特に嫌いな国にインドが入ることは多かった。でも、どちらにも特にはいらない人ももちろんいる。
多の国と比較すると多少その傾向はあるかもしれないが、結局は人による。としか言えないかも知れない。
人生観は変わるのか?
この問いも難しい。そもそも人生観が変わるとはどういうことなのだろうか。この人生観という言葉。あまり他の文脈では聞かない。あまりに曖昧で抽象的。
人生を観ると書いて人生観。その人生には仕事も人間関係もお金も自然も家事や趣味、ありとあらゆるものが含まれる。何か1つの見方が変われば人生観が変わったと言えるのであれば、明らかにインドに固定する必要は無い。
アフリカや中南米の国々、アメリカやヨーロッパの国でだって変わるだろうし、日本でも東京在住の人が沖縄や北海道、いや隣町でだって変わりうるのではないか。
そう思う一方、14年もインドにいてインドを訪れる日本人を万を超える人を見てきて感じることもある。確かにインド体験がその後のその人の人生のターニングポイントになったという人は多の国に比べて多いということ。
大切なのは問いかもしれない
インド在住者だから聞かれるこれらの問い。面白い。答えがどうかということよりも、その問いに含まれる問い。問いが問いを呼ぶのが面白いと感じるのだ。
特に「インドに行くと人生観が変わる」という噂、都市伝説。そこからどんな問いが生まれるのか。とりあえず思いつくままに書いてみた。
問いが生む問い
人生観は本当に変わるのか?
どこから生まれた都市伝説なのか?
人生観が変わる国はなぜインドなのか?
の噂から日本人はインドをどう見ているのか。
人生観を変えたい国としての日本があるのではないか?
「インドに行くと人生観が変わる」の功罪
「インドに行くと人生観が変わる」という噂をインドの人はどう思うのか?
実際に変わるとしたらどういうメカニズムがあるのか?
何となく見えてくるのは、インドを語っているだけではないのでは無いか。他者と出会うことの可能性とその時に大切になることが含まれているように思う。
これらを少しずつ探求していこうかと思う。
ここからはお知らせです。
12月10日(日)「インドに行くと人生観が変わる」を文化人類学的に考察・探求するイベントやります。
色んな問いがあるこのインドにまつわる都市伝説。興味深すぎるので、府中インドの会でもやってみます。一緒に登壇するのはインドでも度々フィールドワークをしてきた、東京大学で文化人類学の博士課程に在籍する岡本ゆかこさん。
他者と生活を共にしながら探求を深める文化人類学。この問いにはうってつけなのではないかと。ちなみに僕も文化人類学部卒なんです。
いやぁ今から楽しみです。