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新型コロナウイルス感染者が出た場合の企業側の留意事項について(社会保険労務士 舘野聡子氏より回答)

【質問】
新型コロナウィルス感染者が発生した場合、出社停止期間の定め方や留意事項について
(企業規模:100名以下、業種:メーカー)


新型コロナウィルス感染者が発生した場合の以下対応について、ご相談させていただきたくお願いいたします。
1.感染者が発生した場合の出社停止期間の定め方
2.家族が感染した場合の社員の出社停止期間
3.濃厚接触者の範囲
(同じ執務室内の従業員を全員を出社することは事業内容から難しく、ある程度範囲を区切りたい)
4.出社停止期間の休暇及び賃金の扱い
その他に留意事項などございましたら、ご助言いただけますと幸いです。

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【回答】

館野さん

社会保険労務士 舘野聡子氏より回答


御質問について以下、回答いたします。
1.感染者が発生した場合の出社停止期間の定め方
新型コロナウイルスは感染症法における指定感染症ですから、感染症法第18条に基づく就業制限が解除される必要があります。
感染の疑いから検査によって感染者と確定した場合には、入院治療となりますが、軽症の場合宿泊施設若しくは自宅での療養を指示される場合があります。その療養の状況によって解除の基準が示されています。(厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策推進本部 令和2年5月1日 事務連絡)

就業制限の解除基準
① 症状の軽快が確認されてから(無症状病原体保有者については陽性の確認から)24時間後にPCR検査を実施し、陰転化が確認された場合には、検査に係る検体採取から24時間以後に再度検体採取を実施して、2回連続でPCR検査での陰性が確認されたこと。
② 宿泊療養又は自宅療養を開始した日から14日間経過したこと(PCR検査は必須ではない)
この基準を満たしていれば職場復帰は可能となります。

併せて職場復帰の目安について、「職域のための新型コロナウイルス感染症対策ガイド」(一般社団法人日本渡航医学会 公益社団法人 日本産業衛生学会)では下記のように整理しています。
次の1)及び2)の両方の条件を満たすこと。
1) 発症後に少なくても 14 日が経過している。
2) 薬剤(*)を服用していない状態で、解熱後および症状(**)消失後に、少なくても3日が経過している
*解熱剤を含む症状を緩和させる薬剤
**咳・咽頭痛・息切れ・全身倦怠感・下痢など

入院していた者については、退院時に主治医からの指示を参考にすること。
・職場復帰に際して、 1 週間程度の在宅勤務を行ってから出社することが望ましい。
・在宅勤務が困難な場合は、復帰後1週間は毎日の健康観察、マスクの着用、他人との距離を2m程度に保つなどの感染予防対策を行い、体調不良を認める際には出社はしないこと。

一律の基準をクリアすることはもちろん必須ですが、その個人の健康状態をしっかり確認し、産業医の意見を聞いた上で、職場復帰を判断する必要があると考えられます。
また感染したことによって、職場での偏見にさらされる、ハラスメントが起きないように十分に配慮する必要があります。


2.3.家族が感染した場合の社員の出社停止期間及び濃厚接触者の範囲
家族が感染した場合、濃厚接触者になる可能性が非常に高くなります。
濃厚接触者の範囲の定義:「濃厚接触者」とは、「患者(確定例)」の感染可能期間に接触した者のうち、次の範囲に該当する者である。
・ 患者(確定例)と同居あるいは長時間の接触(車内、航空機内等を含む)があった者
・ 適切な感染防護無しに患者(確定例)を診察、看護若しくは介護していた者
・ 患者(確定例)の気道分泌液もしくは体液等の汚染物質に直接触れた可能性が高い者
・ その他: 手で触れることの出来る距離(目安として 1 メートル)で、必要な感染予防策なしで、「患者(確定例)」と 15 分以上の接触があった者(周辺の環境や接触の状況等個々の状況から患者の感染性を総合的に判断する)
(新型コロナウイルス感染症患者に対する積極的疫学調査実施要領 令和2年4月20日版)

濃厚接触者となった場合には、保健所から14日間の健康観察が指示されることになります。この健康観察期間は就業制限がかかるわけではありません。企業が感染防止のために独自に休業を指示する場合には、休業手当の支払いが必要になります。


4.出社停止期間の休暇及び賃金の扱い
感染及び濃厚接触者となった場合に労働者が自主的に有給休暇を取得することは、問題ありません。
また、労働者がコロナウイルス感染したことにより就業制限がかかった場合には、企業は休業した分の賃金を支払う必要はありません。
しかし感染の疑いがある、濃厚接触者となったことを理由に職務の継続が可能である労働者に対して、使用者の自主的判断で休業させる場合には、一般的に「使用者の責に帰すべき事由による休業」に当てはまり、労基法第26条の休業手当を支払う必要があります。
(厚生労働省HP 新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け))


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