【15】コロナ禍における持病の管理

企業向け新型コロナウイルス対策情報配信 2020年5月21日

経営者・総務人事担当者のみなさま、御社の従業員さんたちの持病管理状況はいかがでしょうか?持病の悪化によって重大な労働災害を引き起こす危険性もありますので、社内でも注意喚起していきましょう。

1. 課題の背景:

病院は一般的に発熱などの症状がある方が集まりやすく、新型コロナウイルス感染にかかってしまうリスクは比較的高いと言えます。そうした恐れから、かかりつけ医への通院や、持病の薬の内服を中断してしまっている方がすでに散見されています。持病の管理を怠ることで、脳卒中や心筋梗塞などの発作を起こしてしまう危険性もあります。これは場合によっては、新型コロナウィルスに感染するリスクよりも高いといえるかもしれません。

2. 企業でできる対策:

○ 健康管理の重要性につき、経営者からメッセージを発信する
〇 コロナ禍で乱れがちな生活習慣への注意喚起を行う
○ 持病を持つ部下に通院を中断せず、
 内服薬を切らすことがないよう指導する
○ 従業員に健康状態のモニタリングを勧める

1) 健康管理の重要性につき、経営者からメッセージを発信する
従業員の健康は企業の基盤です。そのため企業のトップや部門長が従業員全体に対し、健康管理の重要さを改めて伝えることはとても重要です。
□衛生委員会や朝礼の機会を通じて、健康管理に取り組むよう
  全社員に経営者からメッセージを発信する
コロナ禍でこれらを自粛している企業においては
□メールやイントラネットへの掲示等を通じて経営者のメッセージを発信する

2) コロナ禍で乱れがちな生活習慣への注意喚起を行う
コロナ禍で日々の生活習慣が乱れがちになる方もいるかもしれません。例えば、感染への恐れから運動を自粛したり、買い物を控えて保存食に頼りがちになったりなど。その他、日々のストレスから飲酒量や喫煙本数が増えることは感染症のリスクにもつながりますので、注意が必要です。職場の上司や人事労務(健康管理)担当者から、次のようなことを従業員に伝えていきましょう。
□人が少ない時間帯に屋外で運動をするなど、感染にも気を付けながら運動量を確保する
□保存食やインスタント食品に頼り過ぎない(塩分の過剰摂取に注意)
□お酒を飲み過ぎない
□コロナ禍をきっかけに禁煙にチャレンジする

3) 持病を持つ部下に通院を中断せず、内服薬を切らすことがないよう指導する
事前に把握している範囲で、部下が持病をもっている場合には、上司はその部下に対して通院を中断したり、内服薬を切らすことがないよう注意喚起をしましょう。感染リスクよりも、持病の悪化によるリスクの方が大きい場合もあります。病院に行くことの不安が強い場合には、オンライン診療の活用などにつき主治医とも相談するように勧めましょう。

□持病を持つ部下に通院を中断せず、内服薬を切らすことがないよう注意喚起を行う
□感染を恐れて受診を控えていることが分かった場合、オンライン診療の活用等(※)につき 主治医と相談するよう部下に勧める
※オンライン診療、電話診療、FAXでの処方箋の送信、混んでない時間帯での通院などが代替手段として考えられます。
※厚生労働省から、新型コロナウイルス感染症の拡大に際し電話・オンライン診療を行っている対応医療機関リストが都道府県別に出されていますので、そちらもご確認ください。(関連情報4)

4) 従業員に健康状態のモニタリングを勧める
体重や血圧は健康状態の大切な指標です。コロナ禍におけるストレスや生活習慣の乱れから、体重や血圧も変動しやすい状態にあると思います。ぜひ従業員に体重や血圧のモニタリングを勧めましょう。
□個人で血圧や体重のモニタリングをするよう勧める
物品の共有は控える時期ですので、なるべく個人での血圧計・体重計測定が望ましいですが、職場にこれらを設置している場合は1回使用ごとに消毒するようにしましょう。
□共用の機器は1回ごとに消毒する(そばに消毒用品を設置する)

3.留意・補足事項
・健康情報は重要な個人情報になりますので、職場での取り扱いや、受診勧奨の際には、個別に対応する、情報の共有は必要最小限にするなどの注意が必要です。このため、産業医・保健師等との契約がある企業では、これら専門職の活用もご検討ください。

4.関連情報リンク:

1) 日本内分泌学会 内分泌代謝疾患で治療中の患者さんへ 新型コロナウイルス(COVID-19)への対応について
2) 日本高血圧学会 新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う緊急事態宣言下で特に高血圧患者の皆様に知っておいていただきたいこと
3)国土交通省自動車局 事業用自動車の運転者の健康管理マニュアル
4)厚生労働省 新型コロナウイルス感染症の感染拡大を踏まえたオンライン診療について

5.資料リンク

・本資料のPDF(未掲載)
本資料の動画
・本資料のパワーポイント↓(衛生委員会に編集してご活用ください)

文責:五十嵐 侑(東北大学 産業医学分野)

※本文章は、産業医有志グループ(今井・櫻木・田原・守田・五十嵐)で作成しました。厚生労働省新型コロナウイルス対策本部クラスター対策班・和田耕治先生(国際医療福祉大学・公衆衛生学教授)のサポートも受けております。今後も経営者・総務担当者向けに必要な感染拡大防止策情報を随時配信させて頂きます。本情報は著作権フリーですので、ぜひお知り合いの経営者に拡散をお願いします。
※本内容に関するご意見・ご要望は、covidー19@ohsupports.com までお寄せください。
※これまでに配信しましたバックナンバーは、こちらもご参照ください。


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