学会報告:産業精神保健学会2024北九州その2
産業精神保健学会2024北九州、こちらの報告の続きです。会場となった産業医科大学ですが、チラシにもありますように「産業医学の聖地」です。卒業生が全員産業医になっているわけではありませんが、やはり日本の産業医学の中心です。やっと「聖地巡礼」ができました。
▼スティグマ軽減とメンタルヘルスリテラシー向上による健やかな職場作り
ワールドカフェを終えメイン会場に向かいました。スティグマ、ヘルスリテラシーという用語にも惹かれましたし、私がシンポジウムでオープンダイアローグの話をした時にお世話になった佐藤先生、真船先生が司会でした。また私がこの学会の編集委員になって初めて参加した委員会で議論した、合理的配慮の特集に寄稿してくださったソルトさんも登壇されるので、ぜひお話を聞きたかったのです。
●ヘルスリテラシー - 正しい情報を伝えるだけでは不十分
江口先生によると、ヘルスリテラシーとは「自分や周囲の人々の良好な健康状態の維持増進のために必要となる情報やサービスにアクセスし、理解し、評価し、活用できるようにする知識や能力」であり、単に正しい情報を伝えるだけでは不十分とのこと。コロナ禍で産業医として企業に対し行った情報発信のあり方を振り返ることになりました。
●話し合う場に第三者が入ること
ソルトさんは自閉スペクトラム症の診断を受けている発達障害当事者です。ご自身の経験から、健やかな職場を作っていくには当事者と上司の話し合う場に第三者が入ることの重要性を強調されていました。これは私たちが取り組んできたオープンダイアローグの理念と重なるものです。やはり対話が大事ですね。
●同じ会社で働く仲間として、同じ目的をもって働く
藤沢さんの話もまた印象深いものでした。バンダイナムコウィルはバンダイナムコグループの特例子会社で、100名以上の障がい者を雇用しています。2017年に着任した当初、「スタッフとスタッフ以外の社員」という、思い込みのような隔たりが生まれているように感じ、「同じ会社で働く仲間として、同じ目的をもって働く」というシンプルな構造にできないものかと考えたと語られました。こういう素晴らしい考えを持った取締役がいるとは!と驚きました。そして2022年から、働く上で大切に思うことを対話し、お互いを知り合うことを習慣化するための「もっトーーク会」というものを開催しているとのこと。大切なことは、みんなで話す・みんなで聴く・否定しない会、なのだそうです。これは私がアルコール臨床で取り組んできたグループワークの約束事ですし、アルコールの自助グループのルールでもあります。対話の基本です。このルールを社内で実践している企業があるとは驚きであり、感動でもありました。ワールドカフェに続きこちらのシンポジウムでも充実した時間を過ごすことができました。