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「ギャンブル依存症自死遺族会立ち上げセミナー in 東京」に参加しました

 7月20日土曜の早朝、Twitterを見てこのイベントを知り、慌てて申し込みました。一つ前のnoteに9月に高知さんとご一緒すると書きましたが、高知さんとの間を仲介してくださったのが、ギャンブル依存症問題を考える会代表の田中紀子さんだったので、できればお二人ご挨拶したいと思って伺いました。

▼自死遺族との対話は精神科医として避けて通れない

 さて、会場の星陵会館に入ってビックリ!ホールの定員が400名と書かれていましたが、満員です!そして女性が9割以上。ギャンブラーの妻たちが多いのだろうか。10分ほど遅刻してしまったのですが、もう田中さんの挨拶が始まっていました。そしてすでに涙声で語っていらっしゃる。こちらもつられて目に涙が浮かぶ。
 自死遺族とお話しすることは多くはないものの、この仕事をしていると避けて通れません。「先生、どうして助けてくれなかったのですか!?」と言われたことはありませんが、きっとそう思っているのだろうなと感じながら面談することはありますし、「やれることはやりましたよね」といった会話をしみじみと交わすこともあります。「ご家族の手にお渡ししようとする手と手の間から落ちてしまった」と表現したこともありました。やはり助けられなかったという悔いはずっと残るものです。精神科医にとっては辛い面接です。
 田中さんの挨拶の後は、いずれも家族がギャンブル問題を抱えて自死された当事者お二人(お一人は自死遺族会の代表)の体験談でした。それを聞きながら涙、また涙。自死遺族にとって大切な人の死は、永遠に答えが出ない宿題を渡されたようなものです。「どうして?」と理由を探し求め、「なぜ助けられなかったのか」と悔いがずっと続くのです。

▼ギャンブル依存症自死遺族の特殊性

 自死遺族会の代表は、ギャンブルの家族会に行っても自分の感覚としっくりこないし、自死遺族の集まりに行ってもやはりしっくりとこないと語られました。松本先生が、同じ自死遺族でもギャンブルが原因とはなかなか言いにくいとおっしゃっていましたが、そういった微妙な差異がギャンブル依存症の自死に絞った遺族会を立ち上げた理由なのでしょう。

▼アディクション(嗜癖)はリカバリー(回復)の第一歩

 後半は松本先生の講演から始まりました。心理学的剖検に何年も携わった立場からの話は説得力があります。アディクション(嗜癖)とリカバリー(回復)は対立するものではなく、アディクションはリカバリーの始まりではないか?という松本先生の提言はえらく納得できました。つまり嗜癖者の根源にある課題は生きづらさであり、生きづらさを軽減するためにさまざまな嗜癖的行動にはまっていたというわけです。依存物質をやめる、依存対象を捨てることが回復ではなく、依存することは回復の第一歩と捉え、そこから回復のステップが始まると考えるわけです。

▼高知さん、無理しないでくださいね

 最後は高知さんが登場して田中さん、松本先生と行われたパネルディスカッションでした。高知さんはお母様が自死されたことを公表されていますが、やはりそのことに触れるのは辛そうでした。話し終えた高知さんに、会場から大きな、暖かい拍手が送られました。イベント終了後、客席で田中さんを見つけてご挨拶。一方、高知さんは見つかりませんでした。もう帰ってしまったのかな?今日ご挨拶するのは無理かな?と思いつつ1階に下りたところ、書籍販売コーナーに高知さんは座っていらっしゃいました。サインを求める人がちょうど途切れたので、思いきってご挨拶に。「大切な話をありがとう!」と、もう涙声になりながら声をかけました。高知さんもそれに応じてくれ、互いに涙しながら握手を交わしました。本当に誠実に生きている方だと思います。決して無理してほしくない。ご自分のペースで歩んでほしい。そう願って帰路につきました。

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