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コロナ第8波を前に、対策の基本を再確認しましょう(JES通信【vol.156】2022.11.10.ドクター米沢のミニコラムより)

 9月後半から10月前半にかけて落ち着いていた新規感染者数が、10月後半から再び上昇に転じています。これが第8波の始まりなのか、もうしばらく「踊り場」状態が続くのかはわかりませんが、第8波に備えてもう一度対策を確認しましょう。


●BCPとしてのコロナ対策 4つの基本

 コロナ発生からもうじき3年。この間にさまざまな知見が集積され、本当に必要な対策は何で、必要性の低い対策は何かがはっきりしました。日本の免疫学の権威で、コロナ発生当初から数々の有益な情報を発信している大阪大学の宮坂昌之氏は、対策で大事なのはワクチン、マスク、換気の3つと述べています。企業のBCPとしてはこれに抗原検査キットを加えた4つが重要ではないかと考えていますので、改めてご説明します(表1)。

表1 BCPとしてのコロナ対策 4つの基本
 1.ワクチン     3回以上接種
 2.マスク      喋る時はマスク、喋る人がいる場所ではマスク
 3.換気       会議室や食堂、休憩室
 4.抗原検査キット  その場で結果がわかる

1.ワクチンは3回以上接種する

 新型コロナウイルスに対するワクチンは世界ですでに130億回接種され、その効果は国際的に認められた数々の調査・研究で示されています。たとえば2020年9月から2021年9月までのアメリカのデータでは、ワクチン接種により感染者数を52%(2,700万人)、入院者数を56%(160万人)、死亡者数を58%(23万5,000人)抑制できたと計算しています(資料1)。別の研究ではワクチン接種率が10%上がると死亡率は8%下がる報告されています(資料2)。またアメリカCDCのデータを見ると、ワクチン2回以上接種者の死亡率はいずれの時期も未接種者より低いことがわかります(資料3グラフ)。
 一方、接種後の副反応の問題や感染抑止効果が数ケ月で弱まること、オミクロン株に対しては3回以上接種しないと効果が十分でないなどの課題がありますし、稀ながら重篤な副反応が起こることもあります。より効果的で安全なワクチン開発が急がれます。

2.マスクは効果的に使う

 欧米では感染が落ち着きマスクを外している、日本もマスクを外すべきだ、という話が出ていますが、ドイツもフランスもスイスも再び感染者が増え、マスク義務化に戻っています。日本はこれから冬。感染が広がりやすい季節です。勘違いしないようにしましょう。
 マスクの効果については以前詳しくご紹介しましたのでそちらをご覧いただきたいのですが(資料4)、表2のように改めて整理してみました。

表2 マスクの効果的な使い方
 1.喋る時はマスク、喋る人がいる場所ではマスク
 2.不織布マスクを使う(ウレタンマスクは効果なし)
 3.スポーツの時は外す
 4.屋外の使用は任意(混んだ場所では使いましょう)
 5.職場や公共交通機関、屋内施設では決められたルールを守る

 新型コロナウイルスは人の鼻腔、喉、口の中で生きており、感染者が喋ったり咳をしたりくしゃみをすることで空中にウイルスがまき散らされ、近くにいる人がそれを吸い込んで感染します。感染の拡大を防ぐには、感染している人がマスクをして飛沫をまき散らさないことが重要です。しかし今回のコロナは軽症や無症状の感染者が圧倒的に多いため、自分が感染していることに気づかない人が多いのです。そこで「すべての人がマスクをする」(ユニバーサルマスク)という提案がなされたわけです。
 マスクの素材は不織布を使ってください。ウレタンマスクではウイルスを防げないので、使うなら不織布マスクと二重にしてください。軽い運動ならマスクをしていても酸素飽和度は下がりませんが、スポーツの際は外しましょう。ただし柔道など体の接触が多いスポーツは各競技団体の指示に従ってください。
 屋外の使用は任意ですが、これからの季節は保湿、防寒のために使った方がいいと思います。

3.換気のポイント

 オフィスに人が戻ってくるようになって換気の重要性が増しています。二酸化炭素濃度測定器を使って、会議などの時にどれくらい濃度が上がるのか、測定してみてください。800ppm以下が理想です。手元に機械がない方は、とりあえず北里大学の武藤剛氏たちが開発した「換気シミュレーター」で二酸化炭素濃度を推測してみてください。部屋の大きさ、人数、身体活動度、機械換気量などを入力すれば試算できます(資料5)。
 会議の時間を短くするのも役に立ちます。トヨタ自動車の会議は30分だそうですが、コロナ対策としても有効ですね。また会議と会議の間は30分空け、ドアを開放しておきましょう。サーキュレーター等で部屋の空気を室外に出すとなおいいでしょう。換気が難しければ空気清浄機の使用をお勧めします。空気清浄機は人の近くに置いてください。

4.抗原検査キットの活用

 抗原検査キットについてもこのコラムで何度か取り上げました(資料6)。抗原検査は、いつでも、どこでも、何度でも検査できるわけですが、最大のメリットは「早さ」です。手元にあれば自分で検査でき、その場で結果がわかり、陽性ならば即対応できて感染拡大を防げるのです。またウイルスが排出される期間にはかなり個人差があるので、キットを活用すれば合理的な隔離期間が判断できます。濃厚接触者についても毎日行う検査が陰性である限り、通常の社会経済活動を行って問題ないという研究が出ています(資料7)。私は濃厚接触者に対する企業独自の判断・運用があっていいように思います。
 唯一の難点は、厚生労働省が承認したキットがまだ高価なことです。10月28日には厚生労働大臣が抗原検査キットの早めの購入を訴えましたが(資料8)、希望者が無料で手に入れられるシステムを作るべきではないでしょうか。
 抗原検査キットについてさらに詳しく知りたい方は、南森町CH労働衛生コンサルタント事務所の辻洋志氏の記事がわかりやすいのでご覧ください(資料9)。

●個人として何をするべきか

 以上を踏まえ我々個人としてどう行動するべきか、考えてみます(表3)。

表3 個人として心がけること
 1.風邪症状など体調不良時に人と会わない
 2.三密回避(密集、密接、密閉)
 3.家族以外との会食は慎重に

 まず大事なことは、風邪症状など体調不良時には人と会わないことです。特に感染者が多い時期はまずコロナを疑い自宅で様子を見ます。症状が1日でおさまった場合も最低3日間は自宅待機してください。可能なら5日間くらいは在宅勤務に切り替えてください。
 抗原検査キットはまずは症状が出た日に使ってください。もしも陽性ならすぐに自治体の健康フォローアップセンターに連絡しましょう。初回が陰性でも翌日や翌々日に陽性になることがあるので油断は禁物。検査キットが豊富にあるなら毎日5日後まで、計6回検査してください。キットを節約するなら発症の3日後、5日後の計3回の検査でもいいでしょう。検査が陰性でも症状が悪化する時はためらわず医療機関を受診してください。
 コロナ対策として世界的に有名になった三密回避(密集、密接、密閉)ですが人が多く集まって触れ合うイベントは密集、密接の条件が揃い、屋外でも感染リスクが高くなります。また飲食の場ではどうしてもマスクを外し長時間過ごしますので、感染者が多い時期は同居者以外との会食は慎重にした方がいいと思います。
 
 効果の高い対策に注力し、少しでも負担の少ない暮らしを実現していきましょう。

資料

1)https://jamanetwork.com/journals/jamanetworkopen/fullarticle/2793913
2)https://www.bmj.com/content/377/bmj-2021-069317
3)https://covid.cdc.gov/covid-data-tracker/#rates-by-vaccine-status
4)https://note.com/sangyo_dialogue/n/nd67b0764f8ab?magazine_key=mc75a0c66547f
5)http://jsoh-ohe.umin.jp/covid_simulator/covid_simulator.html
6)https://note.com/sangyo_dialogue/n/nbebf20635e84#02e304ec-3eab-4675-9c7a-38cad07f62ad
7)https://www.thelancet.com/journals/lanres/article/PIIS2213-2600(22)00267-3/fulltext
8)https://mainichi.jp/articles/20221028/k00/00m/010/147000c?fbclid=IwAR3sb9Cmy5x766E_W-Ghnd43ltEuJzVkB_HI9eJREh6OVKQ5FBrAXMIWXBc
9)https://www.igaku-shoin.co.jp/application/files/3416/6295/0639/3486.pdf

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