見出し画像

学会参加報告:産業衛生学会 全国協議会2023(山梨)その1

10月末に日本産業衛生学会の全国協議会に参加してきました。ちょうど信玄公祭りと重なり会場近くのホテルが取れなかったので、東京から日帰りで参加。懇親会に出てもその日のうちに東京に戻れました。
 
-------------------------------------------------------------
第33回 日本産業衛生学会 全国協議会
会期:2023年10月27-29日
会場:YCC県民文化ホール、山梨県立図書館(後日オンデマンド配信)
テーマ:多様化する社会と産業保健
https://convention.jtbcom.co.jp/sanei-kyogikai2023/index.html
-------------------------------------------------------------
 
参加したプログラムは、
・自由集会8(産業保健面談でACTを活かす)
・ランチョンセミナー4(外国人労働者の健康課題)
・自由集会1(動機づけ面接ワークショップ)
・自由集会2(運輸業・建設業 2024年問題の共有)
・教育講演2(第14次労働災害防止計画について)
そして懇親会です。

●産業保健面談でACTを活かす

 今回は自由集会8「産業保健面談でACTを活かす」の報告です。講師の林幹浩先生とは9月の産業保健法学会で知り合い、臨床観などを話していて意気投合!自由集会参加を決めました。
 
1.6つのコアプロセス
 ACTと聞くと私はアウトリーチのAssertive Community Treatmentを思い浮かべてしまうのですが、こちらのACTは第3世代の認知行動療法と呼ばれるAcceptance and Commitment Therapyの方です。ACT自体の説明は私が書くより熊野先生の解説を読んでいただく方がいいでしょう。この解説によるとACTは、人生でやってくる避けることのできない苦しみを無理になくそうとせずに(acceptance)、人生を豊かにする行動を自己決定し行動していくこと(commitment)を目的としています。
 ACTでは以下の6つの行動パターン(コアプロセス)を増やすことで、その目的を達成しようとします。

・アクセプタンス
・脱フュージョン
・文脈としての自己
・コミットされた行為
・価値
・「今、この瞬間」との接触
(ACTの専門家の方、並べる順番が決まっていたら教えてください)

 この6つの行動パターンと、それをまとめた呼び名である「心理的柔軟性」を中心に置いた図を、「ACTのヘキサフレックス(六角形と柔軟性を組み合わせた造語)」と呼ぶそうです。
 
2.「脱フュージョン」とは
 「脱フュージョン」という言葉は初めて聞きました。思考と現実・自分を混同(融合)して影響を受けてしまうことを認知的フュージョンと呼ぶそうです。たとえば上司に、「こんなこともできないのか!」と言われた。たった1回の出来事なのに、以後、上司の顔を見るたびに「できないやつと思ってるんだろうな」と考え、気が滅入ってしまう。こういうのを「フュージョン(融合・混同)」と呼ぶわけです。
 この話を聞いて、私の専門の交流分析では、「混入(汚染)contamination」という用語があることを思い出しました。交流分析ではP(親)、A(成人)、C(子ども)という3つの自我状態から我々の心の動きを考えますが、PやCがAに混ざり込んでしまって、事実が曇って見えるようになる状態を混入と呼びます。この概念と似ているように思えたのです。不思議なもので、似ているなと思うと、混入についてACTのアイデアから検討したくなりました。こういった私の心の動きは「フュージョン」ではなく、「文脈としての自己」と呼べるのでしょうか?
 
3.心理的アプローチの「視界」がよくなるかも
 さて、これら6つのコアプロセスを使って具体的にどう関わるのかを知りたかったのですが、1時間では概論しか伺えず、何とも残念。ただACT普及に心血を注ぐ林先生の熱い情熱はビンビンと伝わってきました。
一通りお話を聞いて、ACTのアイデアを持っていると、目の前のクライアントに関わっている時に、自分はどのコアプロセスからアプローチしようとしているのかがわかり、カウンセリングのプロセスの視界がよくなるのではないかと感じました。支援者の基本的姿勢としてACTがあると、我々の関わりの幅が広がり、柔軟性が高まるのではないか、と思った次第です。
 
4.森田療法に似ているかもしれない
 東京に戻ってから熊野先生の解説などを改めて読んでみると、日本発の心理療法である森田療法に似ているなあと感じました。「森田療法のスマート版(口語版?21世紀版?)」なんて言い方をしたら、ACTの先生、森田療法の先生両方からお𠮟りを受けそうですが、私のような年寄り世代にはこの方が通じるかもしれません。
 ACT Japanのホームページではさまざまな研修の情報が掲載されますので、興味ある方はアクセスしてみてください。
林先生、ACTとの出会いの機会を作ってくださり本当にありがとうございました。 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?