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2018年7月の記事一覧
倒産する出版社に就職する方法・第1回
1998年春、就職氷河期とうたわれた時代。
麹町にある文藝春秋社での一次面接の結果は、電話でかかってくることになっていました。ケータイを部屋のすぐに目につくところに置いておきつつも、私がケータイを注視していることをケータイに悟られぬよう、テレビを見たり、本を読んだり…。
年末恒例のTBS「プロ野球戦力外通告」でおなじみの、呼び出し音がなるとともに過剰に手振れしたカメラがケータイにフォーカスし、満
倒産する出版社に就職する方法・第2回
メロスは激怒した。
いや、俺だって激怒した。
こんなに何社も何社も受けているのに、なぜ採用されない!
30社も受けてるんだから、一社くらい、「君、いいね!」とか言ってくれるところあってもよくない?
ただの一社もないもんかね?
こんなにやる気みなぎっていて、なんでもやります!って言っているのに!
給料要らないから出版社で働きたい!とまで言っている人間をなぜ採らない!?
怒り。
それにしても、
倒産する出版社に就職する方法・第3回
ここは港区の超高層マンションの最上階。
眼前にはグローバルエリートことムーギー・キム。
妹のチャリで夜の帳の中に逃げ込んだはずの俺がどうしてここに?
――数日前のこと。
本サイトの管理人こと、子ども2名+代表取締役1名の計3名を扶養する一家の大黒柱こと妻が私に尋ねてきました。
「このホームページは本の販売につなげたいわけだよね」
「もちろん! 昨今、SNSの重要性がだな…」
「で、連載書
倒産する出版社に就職する方法・第4回
不人気連載漫画が身も蓋もないショートカットで突如最終回を迎えるごとく、ドクの乗用車デロリアンDMC-12じゃなくてSUZUKIのグラストラッカービッグボーイに乗って夜の帳を切り裂いた私は、2016年にタイムスリップしてきたわけです。
というわけで気を取り直して、ここは港区の高層マンション最上階。
椅子に深く腰掛けたグローバルエリートは「ディズニー」という素材にどう切り込んでいくか、次々に私案を
手帳の行方――倒産する出版社に就職する方法・第5回
ない。
本当に、ない。
手帳がないんです。
朝、事務所に着いて、いつものようにバイクのヘルメットを所定の位置に置いて、リュックをおろして、ケータイと財布を取り出して、週末に家で読んできた本を取り出して、手帳と一緒に机の上に置いたはずなんです。そこまで覚えてるんです。
そのあと、パソコン立ち上げて、早めに返信すべきメールを2本立て続けに打ち返して…さて、今日の打ち合わせは11時半からだったよ
三五館シンシャHPの発信力ーー倒産する出版社に就職する方法・第6回
昨年10月、「三五館シンシャ」を立ち上げると決めてから、お詫び、挨拶、取材等々、たくさんの人にお会いして話をさせていただく中で、何人かの方からおなじアドバイスを頂戴しました。
「小出版社は自ら発信していくことが重要である」
ふむふむ。
「新聞広告の効果も減じてきて、本をアピールする場がこれまでとは違ってきている。書籍のアピールにSNSは必須である」
なるほど。
これまで私はフェイスブック
当たり屋就活記……S社との邂逅ーー倒産する出版社に就職する方法・第7回
オッス!オラの相棒、グラストラッカービックボーイ! 連載のつながりとか時系列とか起承転結とか完全無視して、過去と現在を自在に行き来できるすげえやつなんだ。心が清くないと乗れねえけどな。頼むぜ相棒。そんじゃ、ここまでの流れを無視して2000年4月にレッツゴー!
出版社設立資金300万円貯金を目的としたアルバイト生活を2000年3月いっぱいで打ち切った私は、再び出版社に入る決意を固めます。
「人生
サイババと、膝のゆらぎーー倒産する出版社に就職する方法・第8回
ガクガクガクガク……。
あっ、これ、私の膝の震えです。
2000年当時、三五館といって私が真っ先に思い浮かべたのは、アフロヘアのインド人、サイババでした。
覚えてますか、サイババ。
私が高校生のころ、手のひらから聖なる灰とか貴金属とか時計とかを出現させる「物質化現象」を起こすというサイババは、ゴールデンタイムに何度も特別番組が組まれるほどの話題を集めていました。
その火付け役となったのが
約束の日:sentimental Ver.――倒産する出版社に就職する方法・第9回
約束の日。
まだ4月だというのに日中30度近くまで上昇した気温がその勢いを翳らしはじめたころ、俺は家を出る。
もう後戻りはしない。振り返るな。泥道に足跡など残っちゃいない。
俺は俺に言い聞かせる。
「今日、決める」
15:××、京成線に乗り込む。念のため、京成線と都営浅草線と総武線、中央線すべてが遅延し、三五館の場所がなかなか見つからなかった場合を想定したタイムスケジュールで四谷へ。遅刻
やっと会えたね:運命の面接篇ーー倒産する出版社に就職する方法・第10回
丸2年にわたり、外から覗き込めないかと背伸びしたり、どこか開いてる窓ないか探してみたり、ドアノブガチャガチャやったり、しまいにゃ扉に体当たりしながら大声出したり……それでもなかなか踏み入ることのできなかった出版業界のとば口まで来たのです。
もうあと一歩で出版業界に足を踏み入れることができそう…。
いや、今までもここまでは何度か来た。
「行けるかも」と淡い期待を抱いたこともあった。
しかし、
SNS戦略をめぐる対立、および今後の方針についてーー倒産する出版社に就職する方法・第11回
「さ、さ、30!? そんなバカな……なんで?」
私は思わず声を荒げました。
SNSメディア情報局局長兼CEO、そしてCFO、COOも顔をそろえ、三五館シンシャの首脳陣が一堂に会し行なわれた経営会議中の出来事です。
6月上旬に尋ねた際に1日毎43ユーザーだったホームページへのアクセス人数が、ここ数日は30前後だという報告がCEOからあがってきたのです。
「アクセス人数アップをめざし、連載の更
折りと祈りーー倒産する出版社に就職する方法・第12回
およそ1週間後、電話で再訪日を指示された私は、ふたたび四谷を訪れます。
(あっ、前の第11回から読んだ方、つながりありませんので。連載第10回から今回につながります。2000年の話です。なんで私が過去と現在を頻繁に行き来できる能力を手に入れたかについては連載第3回と第7回あたりを参照)
この時点で私は自分の処遇がどうなるのかを知らされていません。
「忙しいのに、わざわざ時間つくって呼び出して
なぜ出版をやるんですか?ーー倒産する出版社に就職する方法・第13回
2000年4月20日(木)、予定の17時をずいぶん過ぎて始まったH社長との2回目の面接。すぐに採用か不採用かを知らされることになると思っていましたが、どういうわけか話題はなかなか核心に至らず、周辺をぐるぐる回るだけの雑談が続きます。
しばらくのちに気づくことになるわけですが、これはH社長独特の会話術(?)で、打ち合わせのメインテーマをすぐに持ち出さず、しばらく雑談に努めるんですね。あえて獲物の周