社会人予備組の弁護士になったその先のこと
標記の件につきまして、私のケースをまとめようと思います。結論からいうとインハウスローヤーになる予定です。
兼業申請するのが面倒なので、法曹の多様化、社会的ナレッジの蓄積の趣旨にかんがみ、無料で公開します。
想定読者
私の背景
略歴
属性
・家族あり(育児中)→家族大好き→ライフ重視(今は)
・向上心は意外とある→勉強も好き→資格マニア
・非法+非ロー→友人に法曹いないし、法学部も少ない。法曹のことはよく知らない。
・小心者→刑事事件とか離婚とか相続とかほとんど縁がない→一般民事、刑事事件をよく知らないしそんなに興味もない
司法試験を目指した動機
購買部署時代にゆるく法律に興味を持ち出し、持ち前の資格マニア癖が顔を出して、ビジ法を取得。司法試験ってどうなん?と思い、予備試験という年齢制限のない試験の存在を知る。これを、ライフワークにずっと勉強し続けていれば、定年後くらいまでには合格するのでは?年金はあてにならないし、定年後に食える資格を持っておこうか。司法試験に受かると裁判官(J)や検察官(P)にもなれるらしいが、転勤だったり激務だったりで大変だし自営業できる弁護士(B)かなあ。
私の就活事情
就活の始まり(22年11月~)
その後、運よく予備試験に合格。予備試験の口述試験後、Bの「就活」がすでに始まっていることを知る。この就活は、もっぱら企業法務分野。
予備試験合格後(23年1月~)
予備試験合格後、司法試験の勉強もしつつ、上記の就活事情を知る。こんなに早くから合格後のことも考えてかないといけないのか、といやになりつつ、就活開始。一般民事・刑事にはあまり興味がなかったのと、そもそもまだこの段階では採用活動をしていなかったりするので(新興系除く)、アットリーガルなどをみて、よさそうな求人の大手/中規模企業法務事務所の説明会や選考に応募する。そして書類落ち。今ふりかえるとダメなESだったりと反省点もあるが、若くないし優秀でもないのがネックなのかなあと推測)。
司法試験直前(23年6月~)
結局、面接に呼ばれ始めたのは、司法試験直前くらいから。この段階では、純粋な企業法務系というよりは、一般民事・刑事も含めなんでもやる系の中小規模系の事務所の求人が多い。最終まで進むこともあるものの、なかなかご縁がない。
ロー在学中受験が可能になり、前年より若くて優秀な司法試験合格者が増えたので、法律事務所就活は一時的な買い手市場になっているのかもしれない、と自分をなぐさめる。
司法試験合格発表後(23年11月~)
就活面では、企業法務をうたう事務所がアットリーガルから姿を消す。一般民事・刑事がメインの事務所の求人が多くなる。そんななか、23年11月、東京三弁護士会合同説明会という弁護士就活では有名なオンラインイベントが開催される。
このイベントは、その年の司法修習予定者向けインハウスローヤー求人が世に出る、実質最初の機会。(企業法務革新基盤とかにはもっと早いものもありますが、だいたい合格発表後です。)
インハウスローヤーのすすめ
就活開始当初からインハウスローヤーには興味がありつつ、就活中に雰囲気に押されて個人事業主として頑張るんだ!と意気込んでいた。しかし、企業法務系で芳しくなかった。そんなとき、改めてインハウスローヤーという選択肢と向き合った。
(弁護士になったら今の職場は辞めるかも)
上記、「司法試験合格発表後(23年11月~)」をご参照ください。
法律学習が好きなのであって法曹実務はよく知らない
一応、前職も企業の法務といえなくもないので、その点では企業法務のほうが、まだ、一般民事・刑事よりは親しみがある。おそらく、社会人で予備試験を目指されている方は、大なり小なり、今の職場で、法律に触れたことがあるのではないか。そう考えると、インハウスローヤーという選択も浮かんでくる。
インハウスローヤー含む企業の法務の仕事の多くは、企業の事業活動を行ううえで必要な契約書の作成・レビュー。そのほか交渉やトラブル紛争対応、コンプライアンス体制の整備、株主総会対応、不祥事対応等多岐にわたるが、訴訟そのものや、難しい法律問題は、企業外部の弁護士に依頼するケースが多い。一般民事・刑事に携わることは比較的少ない。
どうせ弁護士になるなら今より高待遇にしたい
インハウスローヤーとしてであれば、無資格者としてでは就職できないような大企業/優良企業に就職できる可能性が高い。大企業/優良企業だと、相対的に年収が高いので、現職よりもよい収入を得られる可能性が高まる。
上記三会合同説明会は、実質的にインハウス採用の口火なので、名だたる大企業等が説明会を開催している。その選考プロセスは、さぞ大変なのかと思ったが、ふたを開けてみたら、私の戦績は以下のとおり。
面接は最大3回程度で、正直、総合職新卒の面接と比べると内容は緩い。そもそも司法試験合格者という壮大なフィルターがあるので、総合職に比べて分母が少ない。また、企業法務系法律事務所の面接と比べても通過率が良かった。なぜなら、新卒(ロー卒)からすぐにインハウスローヤーになる人は少ないからか。実際、修習生でもあまり見ない。一般に、一度インハウスになると、法律事務所への転職が難しい、と言われているからかもしれない。
※もちろん、法務の知見が全くないとインハウスでも就活は厳しい。
私の場合、司法試験合格後に、ESや職務経歴書を見直し、「新卒者ではなく転職者」であることを意識して、転職サイトや転職エージェントを参考に作り直した。書類落ちした企業は、職務経歴書を添付するのではなく、フォームで学歴とかを入力していく形だったので、職務上のアピールができなかった。
でもワークライフバランスも重視したい
インハウスローヤーは、社員として企業等に雇用される弁護士で、法律事務所に所属する個人事業主の弁護士とは異なり、労基法の適用を受ける。一般に、法律事務所の弁護士よりもワークライフバランスがよいとされている(暦通りの休みだったり、固定給が支払われたり)。
それから、大企業/優良企業であれば、法定以上に従業員の福利厚生・職場環境・働き方などを重視しているケースが多い。リモートやフレックスのところも。子育て世代にとっては、正直、働く総時間が少ない、というよりも、朝夕だけ抜けて夜か早朝働くといった働き方の柔軟性の方が重要なので助かる。
※この点だけをみれば、そのような働き方を許容する法律事務所に所属するか、即独でも達成はできるので、収入の高低、安定度との天秤になる。
※大企業/優良企業であればあるほど、法務として求められる業務量、レベルは高いと思われるので、必ずしも「仕事が楽」というわけではない。また、組織に雇用される以上、仕事の裁量は個人事業主よりは低下するし、職場内の人間関係問題が生じる可能性は高まる。
おわりに
私は、長期的な弁護士としてのキャリアよりも、現在の育児等も含めたライフが重要だった。その観点で、「司法試験合格」という事実を、弁護士として働くためのライセンスというよりも、簿記やTOEICのような、キャリアアップ転職の強力な武器として使った、というのが振り返っての印象です。
一般に、一度インハウスになると、法律事務所への転職が難しい、と言われています。反対説もあったりしますが、真偽は不明です。ただ、私の場合、今は、子どもや家族との時間が最優先事項なので、少なくとも、休日や勤務時間が法定され、収入がある位程度安定していることを重視し、法律事務所ではなくインハウスローヤーを目指しました。弁護士界隈のことがよくわからないがゆえに、予備試験口述後から始まった就活の波に乗り遅れないように、あれよあれよとして。そのうちに、大手法律事務所でバリバリ働くことがなんだか目標になってて、でもそれが破れたので、老後に食えればいいという原点に立ち戻ってきつつ、司法試験合格前よりは明るめな将来になりそう、という現状です。
以上、まだ、弁護士にもなっていない司法修習生の戯言でした。
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