R3司法試験刑法
【問題】
https://www.moj.go.jp/content/001350706.pdf
【出題趣旨】
https://www.moj.go.jp/content/001355370.pdf
【採点実感】
https://www.moj.go.jp/content/001357781.pdf
出題趣旨から読み解いたお作法メモ:
・共同正犯→実行行為を全て満たした者がいれば、その人のTbから検討。次に60検討。
・共謀共同正犯or幇助→正犯意思で区別(重大な寄与=間接事実)
(幇助犯との区別基準と当てはめに不整合・説明不足が認められる答案(例えば,正犯意思 のみを区別基準としていながら,当てはめでは重要な役割を指摘し,正犯意思と重要な役割の関係について何らの説明もない答案等→×)
・謀議→一番遅い時点のものに成立させる
・共犯の錯誤→共同正犯の本質(部分的犯罪共同説)から軽い「共謀」認定。そして、基づく実行行為。(共謀の射程は、「基づく実行」について共謀との因果性を検討するのが違い。)
※抽象的事実の錯誤による故意阻却検討と同じ処理をするが、一応どちらも書いておいた方がよい。
甲乙、A社B店への強盗(236Ⅰ)
謀議計画(4.で具体的な犯行内容を謀議。とした方が、試験対策上よい。∵甲乙間の共謀の有無から検討できる。仮に1で謀議とすると、甲丙謀議の謀議により、甲乙の謀議内容が途中で変更したことになり、処理がややこしい→謀議は、一番遅い時点のものに成立させる)丙、B店副店長。商品仕入れ、持ち出し、価格決定権は店長C。ショーケース陳列方法C。も、常時施錠(鍵は丙C)。B店には防犯カメラ。 →丙≠占有者(≠横領(252Ⅰ)「自己の占有する」)。C=占有者(=窃盗(235Ⅰ)「他人の財物」)。
甲丙、強奪仮装。乙には内緒 →Cに対する窃盗の謀議
甲→乙 当初通りの計画伝達(乙は見張り)。乙承諾。(甲乙謀議)
甲→丙 ナイフで脅迫→しかし、財物奪取に向けられていないから「脅迫」×。丙、指示通り腕時計100点(3000万)を渡す。→236Ⅰの故意がないので235Ⅰ。B、乙と逃走。乙見張りとして重要な役割。→236Ⅰの故意。
甲→乙 400万渡す。甲→丙 1300万渡す。
丙→交際中の丁に、1300万入りバッグ預ける。丁、途中知情後も保管。
第1 設問1
1 甲・丙
(1)252Ⅰの60?
252ⅠTb
・「自己の占有」→丙に占有なし→×
複数の保管者間に上下関係がある場合には,財物を現実に握持しているのが下位者であったとしても,原則として,占有は上位者に属し,下位者は占有補助者にすぎない
(2)236Ⅰの60?
236ⅠTb
・「脅迫」→財物奪取に向けられた×
∵甲と丙があらかじ め内通していた事実を隠蔽するために,あたかも丙が犯人から脅されたかのように仮装することを 企図し,実際にその計画どおりに犯行を遂行
(2)235Ⅰの60?
ア 235Ⅰ
・「他人の財物」→Cの占有するBの所有物、時計は財物→〇
・「窃取」→Cの意思に反して、甲丙乙の占有下に移転→〇
・不法領得の意思→Bを排除して、経済的用法に従い利用処分する意思→〇
・故意→〇
イ 60?
(ア)共謀(意思連絡)〇
(イ)正犯意思
甲、犯行企画。丙、犯行変更企画。分け前同じ。重要役割。自己の犯罪として遂行→〇
(ウ)基づく実行行為
・「他人の財物」→Cの占有するBの所有物、時計は財物→〇
・「窃取」→Cの意思に反して、甲丙乙の占有下に移転→〇
(丙→甲)
∴235Ⅰの60
2 乙
甲丙(235Ⅰ)との共謀共謀正犯(60)?or幇助(62Ⅰ)?
∵乙≠実行行為の分担
(1) 正犯意思?(60と62Ⅰの分水嶺)
→甲乙対等の積極性で計画立案。両者に主従なし。乙の役割は決壊に対し重大な寄与(正犯意思の間接事実)。分け前もそこそこ。→60
(2) 共謀?
∵乙の主観=236Ⅰ、甲の客観=235Ⅰ @4.
ア 共同正犯の本質
→部分的犯罪共同説
強盗罪と窃盗罪の構成要件 が重なり合う窃盗罪の限度で共謀
∵保護法益(他人の財物に対する占有)と行為態様(意思に反する占有移転)が共通。
イ 丙とは順次共謀
(3)基づく実行行為(共犯の錯誤)
甲乙丙間の235Ⅰの共謀→基づき甲丙が実行行為 〇
(4)故意
抽象的事実の錯誤→法定的的符合説→共同正犯の本質と同じ内容を簡潔に。※書かないよりは書いた方がよい
∴甲丙(235Ⅰ)との共謀共謀正犯(60)3 丁
盗品等保管(256Ⅱ)?
(1)
・「盗品等」〇
・「保管」委託を受けて本犯のために盗品等を保管すること 〇
(2)故意
・保管が継続する限り実行行為が継続しているから, 保管途中から盗品等であることの認識が生じた場合であっても,それ以降も本犯者のために保管を 継続すれば同罪が成立 〇
∴盗品等保管(256Ⅱ)
8.甲乙トラブル。甲→丙「乙は生意気。多少の怪我OK。俺が木刀で殴る。乙を押さえてくれ」。嫌がっていた丙も,最終的には応じた。
9.乙到着すぐに丙が羽交い締め。甲→乙 頭 木刀で1回殴る。丙、乙が警察にばらすのをふせぐため、乙の顔腹手拳で多数回殴る。甲「乙はばらしたりしない」と丙を止める。丙、提案者甲が静止したのに腹立ち甲の頭を手拳で殴る。甲、時絶。丙、それを認識。丙→乙、甲の木刀で乙の頭1回殴る。
10.乙、頭に裂傷。甲又は丙の木刀による殴打行為のいずれか一方だけによって形成されたことは明らかであるが,いずれの殴打行為から形成されたものか不明
第2 設問2
1(1)甲は乙の頭部裂傷の傷害結果に関する刑事責任を負わない説明
※中止犯×(∵結果発生ずみ)
(1)共犯関係の解消 →甲の因果的寄与は解消 (物理的・心理的因果性遮断)
∵甲、丙を止める。甲、気絶。丙は甲を放置し第2暴行。当初共謀に木刀殴打なし。第1暴行と第2暴行は動機が違う。
<かつ>
(2)同時傷害特例(207)→×
傷害結果について誰も責任を負わない不都合を解消するための規定
→暴行の行為者間に一部共犯関係が存在し,傷害結果について明らかに責 任を負う者(丙)が存在する→適用されない
2(2)負う
(1) 解消 →因果的寄与未解消
∵甲、発案者で、丙を巻き込む主導者。甲、第1暴行により丙の犯意強化。丙、甲の木刀で第2暴行
(2) 仮に解消してても、207適用 →〇
∵暴行の行為者間に一部共犯関係が存在する場合であ っても,同特例が適用できなくなるとする理由はなく,むしろ同特例を適用しないとすれば,共犯 関係が認められないときとの均衡を失する