記憶の定着に効果絶大な、 Active Recall/Retrieval 法とは?
こんにちは、Choimirai School のサンミンです。
0 はじめに
前回の note でライトナーシステムを紹介した際に、Active Recall/Retrieval と併用すると一層高い効果が期待できると話をしましたので今回の note ではアクティブ・リコールについて詳しく紹介します。
1 記憶の仕組み
学習の究極的な目標は学んだ内容を長期記憶に保存し、既知の知識と繋げることです。
しかしながら、今日学んだ内容は、その日のうちに40%を忘れて、翌日には40%の内容しか覚えることが出来ません。
こうしてすぐ忘れてしまうのは学んだ内容が長期記憶に保存されてないからです。新しい情報が長期記憶に保存されるまでのステップは、
・STEP1 まずは、Working Memoryへ保存
・STEP2 そのあと、重要だと思われる、或いは親近感がある内容は短期記憶へ移動
・STEP3 記憶から定期的に思い起こす(Active Recall/Retrieval)ことで長期記憶に保存
2 陥りがちな従来の学習法
認知科学では一般的な学習法である以下の2つはあまり効果的でないことを指摘しています。
・読み直し
・ハイライト(線引き)
TOEICの単語帳を開いて単語の意味をひとつずつ確認したり、資格のテキストを開いて重要事項を読み返していったり、といった勉強方法がこれに当てはまります。
それでは、何がいいのかというと「Active Recall/Retrieval」という方法です。
3 Active Recall/Retrieval とは?
複数の認知心理学者による研究によりますと、ただ単に学習内容を書いたり読んだりして覚えるよりも、記憶の中から情報を検索して思い出す行為(Active Recall / Retrieval Practice)をするほうが記憶が強化されるとのことです。更に、Active Recall は記憶の強化だけでなく忘却を遅くすることにも役立つことが証明されています。
Active Recall:記憶の中から情報を検索して思い出す行為
2011年の研究によりますと、同じテキストを4周回した生徒より、Active Recall で学習した方が約20ポイント成績が良かったと報じています。さらに驚くべきことはテストを実施する前に「どの勉強法が一番効果があると思いますか?」と聞かれると、繰り返して読むを選んだ生徒が圧倒的に多かったということです。
私達が直感的に正しいと思うことがそうでないケースは多々あります。
また、Make It Stick(使える脳の鍛え方:成功する学習の科学)では反復することについて、勉強したつもりにはなるものの覚えたことは長持ちしないとも指摘しています。
あと、Active Recall はただ単に同じテキストを読んだり書くより記憶から情報を検索し思い出す必要がありますので、難しくてやらない人も多いと思います。しかし、このちょっとした難しさがあるからこそ記憶に定着しやすいです。
ちょっとした難しさがあるからこそ記憶に定着しやすい
認知心理学ではこの難しさを、Desirable Difficulties と呼びます。
4 アクティブ・リコールの進め方
今回の note では TOEIC勉強を例にあげて Active Recall の進め方を説明します。
① 模試を解く
Active Recall の対象にする模試を時間を測ってまず解きます。
TOEICの模試は過去問を収録している既出問題集をオススメしたいです。
② 問題をレビューする
Active Recall を始める前にまず、学習する内容を十分理解するのが大事です。正解した問題も含め答えの根拠を確認しながら復習をしてください。
③ Active Recall の準備をする
TOEICの場合、PART1からPART7までありますがパートごとに Active Recall の進め方は少し異なると思っています。
PART5の場合は、設問だけで答えを思い出すようにしてください。
例えば、問題を解く時には次のように設問と選択肢がセットとなっています。
114. Taste tests suggest that most people ------- Dairysmooth's red-bean-flavored ice cream very appetizing.
(A) find
(B) feel
(C) take
(D) like
一方で、Active Recall の問題を準備する時は、下記のように設問だけが見えるようにします。
114. Taste tests suggest that most people ------- Dairysmooth's red-bean-flavored ice cream very appetizing.
5 「Active Recall +間隔反復学習」で全ての問題を自分の物にする
ライトナーシステムを紹介した note でも触れていますが Active Recall を利用しても新しく学んだ内容を長期記憶に保存するためには、間隔をあけて反復学習をするのが肝要です。TOEICの問題を例にして、 「Active Recall +間隔反復学習」の進め方を簡単に紹介します。
① 「ボックス」と「スケジュール」を作る
ボックスは5つを用意し、学習の間隔はボックごとに、次のように設定します。この間隔はニーズに合わせて調整するようにしてください。
・Box1: 毎日
・Box2: 3日おき
・Box3: 一週間おき
・Box4: 16日おき
・Box5: 35日おき
物理的なボックスや引き出しを用意するのも良いですが、Roam Research を活用するのもオススメしたいです。Roam につきましてはまた別の note で詳細を紹介します。
② ボックス1の内容をレビューする
例えば、Box1 にある、
126. The clients have indicated that a reception area of 60 square meters will be ------- in the new building.
の答えが、sufficient だと覚えていたのであれば、タグを「#Box2」に変えるだけで次のボックスへ入れることが出来ます。Box2 のスケジュールは既に3日おきとなっています。
③ ボックス2の問題を確認
今日は覚えている内容であっても、他の情報を見たり・聞いたり・読んだりすると忘れてしまう場合も多いです。3日後に同じ問題を見て、まだ覚えているのであれば今度は、Box3 に入れます。もし、忘れた場合は、Box1 へ戻してください。
このように5つの箱の中をいったりきたりさせることによって効率よく苦手なものだけを集中して覚えることができます。
6 まとめ
復習をするときにただ単に学習内容を書いたり読んだりして覚えることをPassive Review といいます。パッシブレビューの場合、勉強した時は覚えたつもりになっても実際テストの時は思い出せないことが多いです。
受動的な学習法ではなく、より能動的な姿勢で自分の理解を確かめる Active Recall をオススメしたいです。間隔反復と組み合わせることで学んだ内容が長期記憶に保存され、別のことを学ぶ時も関連性などに気づいてより大きな知見を手にすることが出来ます。
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