シン・日本共産党宣言
党議拘束というシステムがあります。特に日本ではその拘束力が強い、といわれています。党員が二十名の政党があって、議会で十の法案を審議する場合、すべての法案で全員一致でまとまる、なんてことはありえないはずだし、十一対九で決着がつく、なんてこともあり、多数の意見に分かれる場合だってありえます(決議の前の根回し、なんてことが、ほとんどでしょうけれども)。
不本意ながら、党議に従い審議にあたる、というのでは議会はその役割を果たしている、とは言いがたいのではないでしょうか。
さらに日本共産党では、〈党内に派閥・分派をつくらない〉という規約があるので、ということは党議に反することはできない、と明文化されているも同然です。
それは、〈現在の共産党について言うと、「決定されたことは、みんなでその実行にあたる」様は嫌というほど見ているが、「民主的な議論をつくし」ているかどうかは見えていない。「党内では民主的な議論をしている」と内部の人が言っても、国民の目に見えなければ、果たしてそれが真実かどうか証明することができないのだ〉(63頁)という主張からも、うかがえます。その弊害を取り除くため、松竹は党首公選を求めています。
しかし現状では、有力者と言われている人たちは中央委員にであり、〈中央委員会は、提案された議案を「全会一致」で可決してきたから〉、〈誰が出馬したとしても、争うべき政策や方針のない選挙になって〉(29頁)しまう、と指摘しています。
では、著者の立候補は可能なのでしょうか。〈ヒラの党員である私は、自分の所属している支部の党員にしか推薦をお願いするための働きかけをすることができない。それが規約の定めなので〉あり、〈私が隣の職場、地域の支部に出かけて行って、そこで推薦をお願いする行動をとれば、何らかの処分が下されることになる。志位氏が同じことをしても問題にならないが、ヒラの党員がやれば問題になる〉(70頁)ために推薦者を集めるのは困難、と結論しています。
ちなみに、火事の危険を避けるため、今まであった冷蔵庫を撤去されたが、新しい建物には冷蔵庫をおいている部屋もあり、そのことを伝え政策委員会にも置かせてほしい、と伝えたところ、「なぜあの部局にあることを知っているのだ。他の部局と連絡をとることは分派につながる行為だ」と批判された、という笑えない笑い話(72頁)も紹介されています。
あくまで、共産党で重要なのは内部での評価であり、「共産党」という名称ではないだろうか、という不信を持ちます。外部に対する視線がないように思えるのです。
基本的に、共産党は資本主義を否定しているから、労使の対話の担い手であり、資本の存在を前提とする労働組合は認められるものではない、ことは想像できます。しかし現状をみれば、資本主義の世界にあることは動かしがたい事実です。それを受け入れ、共産党が歩み寄るべきだと述べています。
著者である松竹伸幸は、日本共産党から二〇二三年二月五日に除名が決定しました。それを受けて、共産党批判の社説を朝日新聞が発表し、志位和夫委員長が〈まさに党の自主自立的な運営に対する乱暴な介入であり、干渉であり、攻撃だと私たちは断じざるを得ない〉(産経新聞 2023/2/9)と反論しています。
干渉ですか、強権国家の主張によく見かけます。
松竹伸幸『シン・日本共産党宣言 ヒラ党員が党首公選を求め立候補する理由』 文春新書 2023
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