令和6年春の叙勲・褒章 美容業界から叙勲3名、褒章4名が選出される
令和6年春の褒章の受章者が4月16日に、叙勲の受章者が4月19日にそれぞれ閣議決定されました。
4月29日付にて発令となります。
美容業界からは叙勲3名、褒章4名が選出されました。
■美容業界から叙勲3名、褒章4名が選出される
令和6年春の褒章・叙勲の受章者が閣議決定し、それぞれ発令されました。
褒章受賞者には理美容師4名が、叙勲受章者には組合の要職を務めた3名が選出されています。
・旭日単光章
◎工藤満次(80)青森県弘前市:青森県理容生活衛生同業組合副理事長(現職)
◎野中正(76)鹿児島県南九州市:鹿児島県理容生活衛生同業組合副理事長(現職)
◎山本久美子(75)神奈川県秦野市:元 神奈川県美容業生活衛生同業組合理事長
・黄綬褒章 功績概要:多年理美容師としてよく職務に精励したこと
◎花田幸子(87)京都府長岡京市:(株)サロンドユキ会長
◎武藏均(62)千葉県船橋市:ヘアーサロンムサシ
◎森本公子(51)東京都江東区:(有)カールピア・モリモト常務取締役
・藍綬褒章 功績概要:多年生活衛生関係団体の要職にて斯界の向上に寄与したこと
◎中尾博志(65)愛知県名古屋市:愛知県美容業生活衛生同業組合理事長(現職)
■旭日単光章とは?
今回、美容関連組合の要職を務めた3名が叙勲となった旭日単光章(きょくじつたんこうしょう)とはどのようなものなのか、詳しくみていきます。
・日本の勲章の一つ
旭日単光章は日本の勲章の一つです。
勲章とは、
◎社会や人のために重要な仕事をした人
◎目立たなくとも大切な仕事をコツコツと長年続けた人
◎誰かを救うために力を尽くした人
こういった人や、その仕事ぶりに対して国が表彰するものです。
これは「栄典制度」と呼ばれ、様々な分野において優れた行いをした人の功績や業績を表彰し、栄誉のしるしとして勲章や褒章が授与されます。
勲章制度が制定されたのは1875年、褒章制度は1881年で、いずれも明治時代から続いています。
授与のタイミングは4月29日(昭和の日)と11月3日(文化の日)の年2回です。
そのため「春秋叙勲・褒章」と呼ばれています。
・勲章の種類
勲章には、大勲位菊花章・桐花大綬章・旭日章・瑞宝章・文化勲章などがあります。
今回、美容関連組合から3名が選出された旭日単光章は「旭日章」のなかの一つです。
旭日章は、功績の内容に着目した勲章で、
公職や職種別・業種別団体など、公益性を有する団体の役員や企業経営者、各分野で顕著な功績を挙げた人に授与されるものです。
旭日章には功績の度合いにより、次の6つがあります。
◎旭日大綬章(きょくじつだいじゅしょう)
◎旭日重光章(きょくじつじゅうこうしょう)
◎旭日中綬章(きょくじつちゅうじゅしょう)
◎旭日小綬章(きょくじつしょうじゅしょう)
◎旭日双光章(きょくじつそうこうしょう)
◎旭日単光章(きょくじつたんこうしょう)
旭日単光章は6番目の勲章となります。
授与基準は、公職と公益団体で異なります。
公職の場合は町村長や都道府県議会議員、市議会議員、特別区の議員、町村議会議員が対象。
公益団体の場合は市町村の区域を各堂範囲とする団体の長が対象。
・どのように授与が決まるのか
春秋叙勲は毎回、4,000名ほどに勲章が授与されています。
候補者は各府省の大臣などから推薦を受け、内閣府賞勲局にて審査を行うとのこと。
審査を通過した後に閣議決定され、天皇陛下の御裁可を得て発令となります。
候補者は推薦にて選ばれますが、その方法は2通りです。
一つは通常推薦と呼ばれるもので、都道府県・市町村や関係団体から推薦される方法。
もう一つは一般推薦と呼ばれる方法です。
これは国民が直接、内閣府賞勲局に推薦するというもの。
推薦書と賛同書があれば候補者としてふさわしいか検討し、通常推薦者と同じように審査を受けることができます。
・一般推薦の注意点
一般推薦を行う場合は推薦書1通を用意する推薦者が1名と、賛同書をそれぞれ用意する賛同者が2名揃う必要があります。
ただし、候補者地震や二親等内の親族関係にある人が推薦者・賛同者になることはできません。
また、推薦者と賛同者についても、二親等内の親族関係にない人であることが条件となるので注意が必要です。
・春秋叙勲以外にも
叙勲には、春秋叙勲以外のものもあります。
◎危険業務従事者叙勲
警察官・自衛官・消防吏員・海上保安官など、著しく危険性の高い業務に精励し、国または公共に対して功労のある人が対象の叙勲です。
春秋叙勲とは別となりますが、発令は同じ4月29日と11月3日に行われます。
◎高齢者叙勲
春秋叙勲では受賞されていない功労者に対し、その人が88歳に達した機会に勲章を授与するという制度。
発令は毎月1日付です。
◎死亡叙勲
勲章授与の対象となる人が死亡した場合に授与されるもの。
発令は原則として死亡日から30日以内に手続きを完了するとしています。
◎外国人叙勲
外国人に対する叙勲です。
来日した国賓や、離任する特定国の駐日大使などに対する「儀礼叙勲」と、日本との友好親善などの功績に対する「春秋外国人叙勲」があります。
■黄綬褒章・藍綬褒章とは?
続いて褒章についてみていきましょう。
今回、理美容師3名が黄綬褒章(おうじゅほうしょう)に、1名が藍綬褒章(らんじゅほうしょう)に選出されました。
褒章とはどのようなものなのでしょうか。
・褒章とは?
褒章は、勲章と同じ栄典制度の一つです。
社会や文化に貢献した人に対し、国が表彰します。
褒章には授与対象に応じた次の6種類があります。
◎紅綬褒章(こうじゅほうしょう)
◎緑綬褒章(りょくじゅほうしょう)
◎黄綬褒章(おうじゅほうしょう)
◎紫綬褒章(しじゅほうしょう)
◎藍綬褒章(らんじゅほうしょう)
◎紺綬褒章(こんじゅほうしょう)
・黄綬褒章とは?
黄綬褒章とは、農業・商業・工業などの業務に精励し、まわりの模範となる技術や実績を持つ人に授与されるもの。
美容業界は商業業務に分類され、巧みな技術を持つ多くの理美容師が選出されてきました。
春秋叙勲・褒章では毎回4,000人ほどに授与されており、美容業界ではそのほとんどで数名の理美容師が選出されています。
・藍綬褒章とは?
藍綬褒章授与の対象は2パターンあります。
まず、保護司・民生委員・児童委員・調停委員など、国や地方公共団体から依頼されて行われる公共の事務に尽力した人。
また、会社経営や各種団体での活動などを通じ、産業の振興や社会福祉の増進などに優れた業績を挙げた人。
今回の選出概要にも「斯界の向上に寄与したこと」とあります。
・そのほかの褒章
褒章には上述の6種類の他に「褒状(ほうじょう)」と「飾版(しょくはん)」と呼ばれるものがあります。
褒状とは、褒章の授与対象が団体などであった場合に、飾版はすでに褒章を授与している人にさらに同種の褒章を授与する場合に適用されます。
■令和5年秋の褒章でも美容業界から3名が選出
美容業界から叙勲3名、褒章4名の受賞者が選出された令和6年春の叙勲・褒章ですが、令和5年秋の褒章でも受賞者が出ていました。
・3名が黄綬褒章に選出
令和5年秋の褒章では、美容業界から3名が黄綬褒章を授与されています。
◎浅野美鈴(68)岐阜県加茂郡富加町:現 PremiereClasseMisuzu
功績概要:多年着付け氏としてよく職務に精励したこと
◎根津英和(62)京都府京都市伏見区:現 HAIR SALON NEZU理容師
◎泥谷良一(76)大阪府大阪市住之江区:現 カットハウス良の店代表
功績概要:多年理容師としてよく職務に精励したこと
いずれも技術と実績を認められての授与となりました。
■春秋叙勲・褒章にて選出されることの意義とは?
国や公共のために功労があったとして表彰されるのが春秋叙勲・褒章です。
では受章者にはどのようなものが授与されるのでしょうか。
・勲章と褒章の仕様
選出されると勲章の場合は、身につけるためのリボンのような綬(じゅ)とセットで授与されます。
褒章の場合は種類に応じた色の綬とメダルが授与されます。
たとえば黄綬褒章であれば黄色の綬になります。
どちらも、身につけやすいように簡略化された略綬(りゃくじゅ)とよばれる円形の綬が併せて授与されるとのこと。
・授与されるのは名誉のみ
通常の式典などで表彰される場合、賞状やトロフィー、盾などとともに受賞者に贈られるのが賞金です。
なかには賞金がメインとなっているものもあるでしょう。
しかし春秋叙勲・褒章で受章者に授与されるのは勲章または褒章のみ。
金銭などの贈呈はありません。
また、生活面における優遇や特典なども一切ありません。
春秋叙勲・褒章で授与されるのは名誉のみとなります。
・得た名誉は生涯の財産に
金銭の贈呈や優遇措置などが一切存在しない春秋叙勲・褒章ですが、その名誉は生涯続きます。
また、国が表彰するとあって、毎回必ずニュースで取り上げられ、受章者について細かな報道がされます。
全国に功績が知れ渡るのはもちろん、業界の認知度や個人の知名度や信用度が格段にアップするでしょう。
受章によって金銭は得られませんが、名誉によって目に見えない利益を得られることは間違いないでしょう。
■時代に合わせて制度の見直しがされている
明治時代から続く栄典制度はその歴史の長さゆえに現代にそぐわない点もありました。
そういった部分について、制度改正によって何度か見直しが行われています。
・わかりやすくシンプルに
特に大きなものでは2003年に行われた制度改正でしょう。
これまでの勲章は男女で区別されていました。
旭日章は男性を対象とした勲章です。
女性を対象とした勲章は宝冠章(ほうかんしょう)というもので、この2つは同格とされていました。
その2つの勲章の下位におかれていたのが瑞宝章(ずいほうしょう)だったのです。
しかし時代の変化などを鑑み、男女の区別をなくすことに。
宝冠章は廃止し、男女ともに旭日章を授与されることとなります。
それに伴い旭日章と瑞宝章を同格とし授与対象にて分けることを明確にしました。
◎旭日章:功績の内容
◎瑞宝章:功労の積み重ね
また、旭日章の等級が6つになったのはこの時で、同時に「勲一等」などの数字も廃止されています。
令和6年春の叙勲・褒章で美容業界から叙勲3名、褒章4名が選出されました。
国や公共、業界発展に寄与したとして国から表彰されるのが春秋叙勲・褒章です。
今後も美容業界から多くの受章者が出ることが期待されます。