"戦争を知らない子供達"
と言われた時代に育ったわたしは小学生の頃、授業で戦争の事を学びました。
当時の様子をパネルにした物や先生からのお話はとても衝撃的でした。
その中でとても心に残ったお話が焼け野原の中、沢山の丸焼けになったご遺体の中から赤ちゃんの声が。
とっさに覆い被さった母親が大切に赤ちゃんを包み、守ったのだと。
その赤ちゃんは立派に大きくなれたのだと聞きました。
その時は、うんうんと、聞くしか出来なかった。
それから何年も過ぎて、一人暮らしをしていた頃。
テレビであるお寿司屋さんのドキュメンタリーを見ていました。
大きなネタのお寿司。
とっても美味しいそうだなぁと見ていると、そのお寿司屋さんは語りはじめました。原爆が投下された日、母の胸の中にいたことを。
あの時聞いた赤ちゃん⁈きっとそう!
私の心の中では今も赤ちゃんだった、、、
何故か胸が詰まる様な衝撃が走りました。
遠い遠い昔の話では無い事に気が付いたから。
私はその数年前、広島へ原爆ドームを見に行きました。
もしかしたら
お寿司屋さんになった赤ちゃん…
会えたのかも知れない…
川の向こうに
あれが原爆ドーム
少し離れた所から
真上の太陽の下
熱い熱い蝉の声
姿が霞んで見えた
近付いて、改めて正面から見上げた時
そこに聳え立つドーム。
実際にはそれ程大きくは無いのですが
見上げた時、眉間を寄せずにはいられなかった。
まるでグッタリと疲れ果てた様なその姿
今にも崩れてしまいそうなのに
何故か立っている。
そして、何故か穏やかに。
生きているみたい。
もう私の中では
建物では無く、あの日からタイムスリップして来た被曝者でした。
もし本当にあの日から突然やって来た人が目の前にいたなら
すぐにお風呂に入れてあげて新しい服を着せてあげて温かいご飯と味噌汁を出してあげたいのに
溢れ出しそうな私の心を抑えるかの様に
静かな眼差しが私の中に飛び込んで来ました。
"ボクはこのままで良いんだよ。
あの日、あの時のまま、ボクはこうしてここにいる。
ずっとずっと、これからもずっと"
まるで両手を苦しげに広げて
私を見つめ、見守る様な眼差しが、ふあぁっと目の前に広がりました。
いつ崩れ落ちてもおかしくないその姿は
あの時のみんなの思い、苦しみを全部吸収してそれだけでそこに
聳え立っている。
ドーム君、いつか
貴方にも平和な時代がやって来ます様に。
そう思わずにはいられず
そう思うしかできなかった。
だから今日は、家族と話そう。
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