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無線機業界の裏側 - 商品企画から見た開発の実態
はじめに
こちらも20年ほど前の話になるので、その前提で記載しております。当時は大手エージェント会社からの紹介で入社が決まった会社でした。東証1部上場で規模も大きかったです。無線機といえば、一般の方には馴染みが薄い業界かもしれませんが、業務用途では重要な通信機器として広く使用されています。
入社時の不安
内定をもらって気がかりだったのは、ニッチな市場ということで仕事に面白みを持てるか?が非常に不安でした。結果、この予感は的中し、自身が使用したこともないものだったので、当時の私は商品に興味を持てず、入社したことを後悔しました。製品への愛着や興味がない状態で商品企画を行うことの難しさを、身をもって経験することになりました。
開発の特徴
開発サイクルは年次で決まってるサイクルではなく、海外で使う無線機だったので、営業がコンペで取ってきたとか、こういう機能が入った無線機がほしいという要望が上がった段階で企画をするという所でした。カーナビのような定期的なモデルチェンジとは異なり、市場のニーズに応じて柔軟に開発を進めていく必要がありました。
都度営業と会話をし、市場規模、ユーザーの声の吸い上げ等を行い、日々資料にまとめていく、カーナビとは全く違う商品企画でした。この経験は、後のキャリアでも活きることになる貴重なものでした。
カーナビとの違い
カーナビの時は商品企画というより設計よりのポジションだったので製品企画を行っている感じで、無線機の場合は、営業よりのポジションになったので、マーケとか戦略とかに力を入れて業務を行う感じでした。
ただ開発をする段階で、商品企画会議、設計会議、試作品、号口品、量産品と流れは変わっておらず、そこはすんなり入りやすかったです。マーケ、戦略というところはこの会社で鍛えられた部分が大きく、今も考え方の一つになっております。
市場の特性と課題
市場の特性として、一般的に陸上、海上、空上の無線機となるので、一般の人はなかなか触れる機会が少ないかと思います。その分、声の吸い上げも難しいのと、一人の声が大きくなりがちで、本当にみんながそう思ってるのか?がわかりにくく、営業の言う事を鵜呑みにしないといけないという所で、自主的な企画ができにくかったです。
特に海外市場向けの製品が多かったため、各国の法規制や通信規格にも配慮が必要で、一筋縄ではいかない開発プロセスでした。
商品開発の特徴
また、無線機自身に通話できれば良いという所があるので、そこに特化した商品を突き詰めれば良いという所で、多機能を求められない、という点も私にとってはカルチャーショックでした。究極どんな環境でも通信できて、らくらくフォンのようにどんな人でも使いこなせるユーザーフレンドリーな使い勝手があれば、良いという所に結論が来て、カーナビのときのような機能追加の自由度は幅が狭い感じでした。
一方で、信頼性と品質への要求は非常に高く、特に業務用途では一瞬の通信断も許されないため、その面での開発の緻密さは他の電機製品とは一線を画すものでした。
必要なスキル
無線機の商品企画で必要なスキルは無線機を好きになること、あと売上が海外を占める割合が多いので必然的に英語の読み書き、会話ができないと非常に苦労します。無線機を好きな人にとっては非常に良い環境かと思いますが、ニッチな市場という所でなかなか馴染みがなく、面白みを見つけるのに苦労するかもしれません。
また、通信技術の基礎知識も必須で、電波法や各種規格についての理解も求められました。これらの専門知識は、入社後に徐々に身についていきましたが、技術的なバックグラウンドがある方が有利だと感じました。
労働環境・給与
給与面は東証一部上場の中では低いかと思いますが、一般的な企業よりは高く、子どもを育てるのも困らないぐらいの額はくれます。時間も残業が月に20から30時間ぐらいで世間一般からみても普通かと思います。私も時間がありましたので、この頃に色々と趣味の幅を広げたというところがあります。
福利厚生も充実しており、年間休日数も十分確保されていました。ワークライフバランスを重視する方にとっては、働きやすい環境だったと言えるでしょう。