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コーヒーと亡き夫

私は旅の疲れを癒すため、道中で見つけた老舗のカフェに立ち寄ることにした。

そのカフェは老朽化がだんだん進んでいるような感じだったけど、店長のおばあさんはすごく笑顔の良い人で、店の雰囲気もコーヒーの味も別格な美味しさだった。
 
全身が生き返る感覚を味わいながらコーヒーを飲んでいると、壁にかけられた写真が目に留まった。

写真はだいぶ昔のものであり、50代くらいの男女が幸せそうに映っていた。私は思わず尋ねてみた。
 
「あの…この写真は」
 
「この写真は、あたしがまだ若かったころに撮った、今は亡き夫との写真だよ。」
 
「そうなんですね…」
 
おばあさんはどこか悲しそうな表情を浮かべながら話しているのを共感しながら、私はコーヒーを飲んだ。
 
「差し支えなければで大丈夫なのですが、旦那様はいつ、どうやって亡くなられたんですか…?」
 
「あたしにもよくわからない…。警察は誰かによる毒殺だと推測してるけど、それ以上の証拠が全然出てこなくて、他の誰も夫の死について知らないって言うし、警察も匙を投げて捜査を打ち切りにするって言った。それを言われたら、あたしも諦めざるを得なかったわ。」
 
「夫が亡くなったことを知ったきっかけはなんですか?」

 「あなた、ずいぶん探偵さんみたいに食い込んでくるわねぇ。家の中よ。あたしが支度から戻ってきたときには急に倒れていて、急いで救急車を呼んだわ。あの時はほんと目の前が真っ暗になったけど、今となっては…うふふ。」
 
「・・・。」
 
複雑な気持ちになりつつ私は、独特の甘さと美味しさを引き立たせるコーヒーを口に入れた。そして、疲れが一気に吹き飛んだほど気持ちよくなったのか、白いモノとともに天井が見えた。





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主人公がコーヒーを飲んだ次の瞬間、白いモノが見えたとあるが、この白いモノとは、主人公が口から吹いた泡。そして天井が見えたということは、仰向けになって倒れてしまったということ。

つまり、このコーヒーには毒が盛られていた。

また夫が亡くなったなら、普通は今でも悲しむはずなのに「今となっては…うふふ」という、なんとも違和感のあるおばあさんのセリフからも、夫を殺したのは…。

そして、主人公は…。


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