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魔女の秘薬

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古い森の奥深くに住む一人の魔女がいた。彼女は見た目は若いが、何世紀も生きてきた。

魔女は人々の願いを叶える代わりに、高価な代償を要求することで知られていた。

ある日、若い女性が魔女の元を訪れた。彼女は美しさを求め、
すると魔女は笑いながら、ある秘薬を彼女に渡した。

その秘薬を飲むと、誰よりも美しくなるが、その代償は「命の一部」だと告げ、女性はそれでもためらいもなくその秘薬を飲み、
瞬く間に驚くべき美を得た。

数日後、別の男性が魔女のもとを訪れた。彼は強靭な体と力を求め、
魔女は同じように秘薬を渡し、同じ代償を求めた。

男性もまた、その代償を承知で秘薬を飲み、圧倒的な力を手に入れた。
魔女はその後も次々と人々に秘薬を与え、そのたびに「命の一部」を代償として要求した。

彼女の家には、年々若者たちが増えていった。
彼らは皆、魔女の恩恵を受けた者たちであり、美しく強くなったが、何かを失っているように見えた。

ある日、若い女性と屈強な男性が魔女の元を再び訪れた。彼女は、美しさを手に入れた後も何かが足りないと感じた2人は魔女にこう尋ねた。

「私たちは何を失ったのでしょうか?」

魔女は微笑んで答えた。「あなたたちの『時間』よ。」

若い女性と屈強な男性はその瞬間、全てを理解した。自分たちの美しさ、強さは永遠に続くものではなく、急速に時間を失っていたのだ。
そして命の一部とは、彼女の寿命そのものだった。

最後に若い女性と男性は一瞬で老化し、その場に崩れ落ちた。
そんな魔女はその様子を静かに見つめ、2人の命の残りを手に入れた。
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そんな物語が綴られた本を読み終えた私は、背筋が凍りそうになった。
「結局、『代償』からは逃れられない…」
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(解説)
魔女が「命の一部」として要求していたものが実は人々の「時間」、つまり寿命だったということ。
願いを叶えるために秘薬を飲んだ人々は、一時的に美しさや力を手に入れるもののその代償として寿命が急速に短くなり、最終的に急激に老化して命を失ってしまう。
つまり魔女はその過程で、彼らの命の残りを吸い取ることで、自身の若さと長寿を保っていた。


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