トラヴィスにはちゃんと人間を斬って欲しい。 TRAVIS STRIKES AGAIN。

好きなシリーズが好きな姿のままであり続けてくれることはとても稀なことである。それが三作目ともなるとなおさらだ。NO MORE HEROESシリーズの新作、 TRAVIS STRIKES AGAINをやっている。

前作と予算が一桁は違うんじゃないかと想像できるくらい小規模なゲームで、フィールドはビームカタナでアクションをするゲーム世界のレベルとホーム画面的なトレイラーハウスのみ。バトルシーンは初期の3Dゲームを彷彿とさせるディテールが省略されたルックで、基本的にカメラは引いた見下ろし視点で迫力に欠ける。話は基本的に会話か古典的なADVスタイルで進む。

私がこのシリーズで好きだったのは、トラヴィスが本能で戦ううちにいろんなものを台無しにしていくところだった。(ランキング戦をすれば大抵どちらかが死ぬ殺し屋ランキングはどうやって総体の維持をしていたんだ?)

ゲームの中のゲームの中でゲームをするトラヴィス。

今回のトラヴィスが戦う舞台はゲームの中の世界で、戦う相手はバグとそのゲームの主人公だ。しかもその世界はもう既に終わった場所であり、多くの主人公は終わりを望んでいる。私としてはやはり、トラヴィスにはモブ人間をぶった斬って欲しいし、それぞれの生活があるであろう殺し屋たちをちゃんと殺して欲しい。それにトラヴィスが愛するゲーム世界で、それをトラヴィス自身に破壊させるなんてことをやらせないで欲しい。

ここまで書いて考えてみると、私は人間よりもバグを大事にしているように思える。価値が倒錯している。

ゲームとしては、スキルを使いこなすと(単調だが)ある程度爽快感のあるバトルがあり、ハッとするような瞬間もある。音楽は相変わらずかっこいいし、ADVシーンのテキストとクラシック表現には力が入っている。

一方で、各ゲームの主人公たちの描写が薄く、またせっかく数が用意された実在するインディーゲームのTシャツがゲーム中ほとんど見られないのは残念である。

あまり近づきたくないおっさん。NMH1に出てきたバッドガールの父親がこれというのには妙な説得力がある。

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