2Dマリオの枠を打ち破った混沌。その先に道はあるか。スーパーマリオブラザーズ ワンダー。
スーパーマリオブラザーズワンダー。メチャクチャ面白いですね。進捗的には最後の最後、ウルトラチャンピオンシップをやろうかなというところです。
各コースとにかく使い回しをほとんどしないギミックのつるべ撃ちで、ひたすら味変味変、しかしその味変がことごとく高品質という恐ろしさ。もしちょっと口に合わないギミックが出てきてもすぐ(本当にすぐ!)次の味が来るから問題無し。昨今のニンテンドー味溢れる力技、面白を口にむりやり突っ込んでくる暴力的な面白さです。
ドンキーコングの出し惜しみの無さや、オデッセイのギミックわんこそばの流れを2Dマリオに取り込み、2Dマリオが作り出した2Dプラットフォームの型に華開いたインディーゲームたちへの返歌とも取れるような仕様の数々。そこに2Dマリオとしての意地を思わせる異様な手触りの良さと、幅広い腕前のプレイヤーを受け止める異様な懐の広さ。ゲーム全体を通してプレイヤーを驚かせようとする一貫した姿勢。10年前からいましたけど?みたいな馴染み感のあるゾウとアワとドリル。喋る花のウザさやワンダーの数々でSNS映えもバッチリだ!
今作は音楽も印象的で、新曲も軒並み耳に残るフレーズばかり。また、ジャンプの時の音が弦楽器になったことはプレイ前の想像以上にゲームの根底に新味を加えています。
遊ぶステージを選択できる幅やバッヂ機能やオンラインのお助け機能は、遊べるプレイヤーの幅を大きく広げていて、序盤から割と高難度なステージがポンポン出てくる割に、私のあまりゲームの上手くない小3の子供でもワールド4まで進められています。間違いなく現時点で最も面白い2Dマリオです。
スーパーマリオブラザーズワンダーが傑作であることに間違いはないという前提を置いた上で、ここからはあまりにも高望み、重箱の隅について書きます。
その先に道はあるか
初代スーパーマリオブラザーズやマリオ64は他者に対しても2D・3Dアクションの道を示しましたし、ゼルダBotWはそれまでのゼルダの当たり前を見直し、新しいオープンワールドの道を指し示しました。一方で、今作はこれまでの2Dマリオの枠を打ち破ったと言えますが、打ち破ったその先に道を指し示すことはできなかったと考えています。
マリオワンダーはまとまりが無さすぎるのです。体験の核が「異様に手触りの良いアクションの上に乗っている混沌」であるため、力技でぶんまわせるニンテンドーや超大手にしか再現性がありません。またプレイしていて、これからこのシリーズがどのように発展していくかの想像もできません。混沌の場からは新しいものが生まれるのかもしれませんが、作品単体の中にある混沌から生まれるものは少ないのではないでしょうか。メイドインワリオシリーズは最初にプレイした時圧倒的な新鮮さを感じましたが、以降シリーズは一貫して、発展の道筋を見つけきれないままのように思えます。
一方、私がプレイ前にはあまり期待していなかったオンラインプレイに関してはこのゲームの中で遺産になり得る数少ない要素だと感じました。
バリバリの2Dアクションをプレイしながらポジティブに方向づけられた風ノ旅ビト的な非言語コミュニケーションをするとこんな体験になるのか、という驚きがありました。
クリボーになった三人が並んで歩きながらゴールまで共に進む一期一会感、高難度ステージを共にプレイしている時の戦友感、助けようとしたのに目の前で消えていくゴースト。記憶に残る体験をいくつも得ることができました。
マリオワンダーは2Dマリオの枠は打ち破りましたが、その力の方向性は発散していて、この先のゲームの進む道は指し示さなかったと感じました。
とはいえあれですね。先のことなんて考えずにまずは目の前の作品に全部ぶちこむ姿勢こそが新しいものを作り出すとも思いますし、プレイヤーはそんなことを考える必要などありません。何よりこのゲームはメチャクチャ面白い。