ドラクエ3HD-2Dの、初対面の商人をルーラで連れて来て老人に身柄を引き渡すだけのイベントについて
これは思い出し怒りみたいなものです。またドラクエの話!
ドラゴンクエスト3には印象的なイベントが沢山ありますが、中でも商人の町に関するイベントは特別記憶に残ります。
このイベントは、未開の地に町を作りたいという老人の願いを叶えるため、パーティメンバーの中の商人を1人、新しい町の開拓者として置いてくるというものです。やがて商人の手腕により町は発展するもののそこには歪みも生まれて……的な。
オリジナルのFC版では離脱した商人のパーティ復帰イベントが容量の都合でカットされたため、その町のために冒険を離れた商人は二度と戻って来ません。このこともより強く記憶に残る理由でありましょう。
(以降のリメイク作ではイベント後にパーティに復帰できます。)
さてこのイベント、離脱する商人がある程度思い入れのあるメンバーでなければエモーショナルではありません。大抵のプレイヤーは、この町のためにルイーダの酒場で新しい商人を登録し、その商人を連れて行ったことでしょう。しかしその場合でもある程度の思い入れは生まれます。なぜならその開拓予定地にはルーラで飛ぶことができず、レベルの低い仲間を抱えたまま、やや厳しい船旅をすることになるからです。ご丁寧に旅路の途中にはバシルーラを使うモンスターが現れるため、肝心の商人だけアリアハンに逆戻り、みたいな体験も生まれたりします。
そんなこんなで苦労して連れて行った商人が町を発展させていくイベントはドラクエ3を記憶に残るゲームにしている理由の一つでしょう。
ここからはHD-2D版の話です。
HD-2D版では、ルーラが、訪れた場所には大抵行ける上にどこでも使えてMP消費無し、いわゆるファストトラベル的な、半ばシステム魔法に変わっています。
これは商人の町の開拓予定地も例外ではありません。そしてルーラでこの場所に飛べるということは、このイベントが大抵のプレイヤーにとってどのようなイベントになるか。
ルーラでアリアハンに戻って初対面の商人をパーティに加え、そのままルーラで開拓予定地に飛んで老人に引き渡すイベントになります。間にバトルも一切入り込みません。酒場に飛んで登録して引き渡しまで二、三分で終わります。町の名前には商人の名前が使われますから、全然知らんやつの名前がついた町の出来上がりです。
あまりにも元のイベントの味が失われてはいないでしょうか。現代風の味付けという名目でジャンクな改変がなされているHD-2D版ですが、特にこのイベントに関しては、元のゲームデザインの意図が利便性という名の圧力によって跡形もなく塗りつぶされています。
今遊べるゲームにするためにどこでもルーラが使えてどこにでも行けるようにしようというのはわかります。でもそれをやったらこのイベントが台無しになることぐらいはすぐにわかるじゃないですか。で、台無しになってしまうならイベントに何らかの手を加えて成立させてあげるのがリメイクというものなんじゃないでしょうか。ルーラを便利にした結果全く存在価値がなくなったにも関わらず存在するリレミトと同じ無神経を感じてしまいます。
1と2もリメイクするという話を聞いて、初代ドラクエをどうやって現代でも遊べるようにリメイクするのかという興味を持っていたのですが、この分だと普通にそのまま作りかねないぞと考え始めています。
終わり。