カーテン生地のワンピースの思い出

先日箪笥の整理をしていたところ、今はもうすっかりボケてしまった祖母が、まだ元気だった頃にわたしのためにと作ってくれたワンピースが出てきた。

祖母は所謂お張り子さんというやつだ。自宅を事務所として居を構え、地元サロンの洋服屋の仕立てを顧客に合わせてサイズ修正したり、新しく仕立て直すようなことを仕事にしていた。

当然、家には端切れが在庫として大量に置かれていた。買ってみたけど結局使わなかったからと言って、近所の人が置いていった布切れを使って、よく孫の私のためにフルオーダーメイドの洋服を作ってくれていた。

久しぶりに出してきたワンピースもそういった作品の一つで、黄色地に大きな茶褐色のベージュの花柄が配された、カーテン生地にありそうな派手なワンピースだった。

最近は大きな花柄のワンピースがプレタポルテ界隈でもよくみられるようになったが、このワンピースは10年ほど前に祖母が作ってくれたものだ。当時は小柄が流行りで、とにかく目立つ柄のワンピースなんて、周囲の友人たちは持っていなかった。

こういった類いのものを与えられ続けてきた家庭環境から、あまり人と違うことを気にしない質で、気にせず着てしまう私だが、当時はさすがに派手すぎて普段使いは躊躇してしまったほどの派手な柄であった。貰ったその場と何度か祖母に会うときに着たきり、あまり出番がなかったのだが、着心地が最高なので残しておいたものが出てきたのだ。

ボケてしまってからはミシンの前に座ることもなくなり、大好きな美空ひばりをぼぉっと眺めながら過ごす祖母の横顔から、久しぶりにかくしゃくとしていた頃の顔を思い出し、手にとって着てみると、当時と変わらぬ素晴らしい心地よい着心地のままで、少しメランコリックな気持ちにさせられた。

これも何かの縁。まだ形見ではないのだが、いつか形見と思い出の品になっても、大事に大事に着ていこうとおもう。おばあちゃん、長生きしてね。

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