地獄の眼球MRI
女性には罹患者の多い、バセドウ病(甲状腺機能亢進症)をご存知だろうか。筆者はこの病とかれこれ8年以上の付き合いである。大学の学部時代、健康診断で発覚して以来、東京ならここに行くしかないと内科医に紹介され、それ以後表参道の伊藤病院にお世話になっている。主治医とも、もう8年の付き合いということになるのか。ウーン、思っていたより長い付き合いだ。
バセドウ病を簡単に説明すると、自律神経を司る甲状腺ホルモンに異常が発生し、やたら活発になってしまう方がバセドウ病、やたらぐったりしてしまう方が橋本病である。(ざっくりしているので、興味のある方はちゃんとした医者の書いた記事を読んで欲しい)
私は、4年ほど前に放射線治療という2日間の日帰り手術で甲状腺を通常より半分ほど小さくしたため、以前はバセドウ病患者であったが、症状的に現在は橋本病の域である。福島第一の事故以来、放射線放射線とやたらと騒がれているが、私は自ら望んで治療のために、放射能を浴びた。そしてその結果、甲状腺は縮んだということだ。全摘手術か、放射線か二択で問われ、ビビりの私は手術を避けただけなのであるが。
バセドウ病で死ぬようなことは滅多になく、薬が効いていれば基本的な日常生活は問題なく過ごすことが出来るが、完治が難しいためか、一応難病指定されている。
バセドウ病の症状として代表的なものは、心臓がすぐドキドキする、息が切れる、手が震える、怒りっぽく忙しない。すぐ疲れてしまうわりに、やたらと活発的。この辺だろう。治療初期、私は全て当てはまっていた。
また、バセドウ病は、その活発なホルモン活動故に、眼球がぐっと突出してしまう症状が出ることがある。
バセドウ病眼症と呼ばれるこの症状は、私は当てはまらないのだが、割とよくある症状である。一応、定期的に症状の経過を見るために、伊藤病院と提携している眼科で検査を行っている。
定期検査では、眼球の動きや眼圧、視力といった普通の検査科目と、眼球がどのくらい突出しているように見えるか、写真を撮ったりする。そして、稀にある検査の親玉とも言えるのが、眼球MRIである。
まず、表参道の眼科に行くためにすっぴんで歩かなければならないし(アイメイクの成分が良くないらしい)、機械が空いている時間に合わせてカツカツのスケジュールなのも忙しなくて嫌だが、それよりもなによりも、MRIの検査そのものが地獄なのである。
MRI経験者ならご存知だろう。MRI機材はやたらゴツい鉄の塊で、検査中は耳栓をするほどの轟音を打ち鳴らす。耳から比較的遠い部位ならばまだましだが、検査箇所は眼球であるため、当然頭部である。耳栓越しにも分かる轟音の最中、検査の15分間は目を閉じ、寝ず、しかし人と話すことは出来ず、ただただ前を向いていなくてはならないのだ。
寝ないで15分間、じっと前を向く。(しかし目は閉じたまま)
これは、ただ寝れずごろごろと寝返りを打つ以上に、辛いものがある。ためしにやってみて頂きたいのだが、ます自分がちゃんと前を向いているのかどうかさえ怪しくなってしまうし、寝ないようにするだけで必死である。
勿論、眠ってしまったら試験の意味がないため、
「眠くなったらお話するので、ナースコールを押してくださいね」
と言われる。しかし、その期間、試験は中断し……それから再開してとなるわけではない。ただ、やり直しになるだけなのだ。多少でも動いてしまう可能性が高いので当たり前だが、ようは仕切り直しになるだけだ。ついこの前やったので、もう数年はやらなくてよいはずだが、必要最低限以外は勘弁していただきたいものである。
苦労して撮った画像は、見てみると結構面白い。試しに眼球MRIで画像検索でもしてみて欲しい。脳より珍しいので、ちょっとした雑談のネタにはなるかもしれない。
地獄の体験をしてみたい方は、ぜひタイマーを使って前を向き続けてみて欲しい。轟音なしで眠らないでいられるかどうかは微妙だが、疑似体験は出来るのではないだろうか。願わくば、もう数分でも、検査時間が短くなりますように。
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