35.平和はビジネスチャンスだ。
少し間が空いてしまいました。アレン・サンドバーグです。前回は戦争とビジネスチャンスの話をしたので、今回はその反対、平和とビジネスの話をしましょう。
戦争はビジネスチャンスではあるのですが、これは大きく二つにわけられる。戦争そのものをビジネスとするものと、戦後の平和を見据えたものである。前回は主に前者の話をした。これは戦争そのものが終わればビジネスも終わりであり、金を出すのは政府・国民であることから、以外とその限界点は低いと言わざるを得ない。
さて、今回は後者の話。戦争中に仕込んでおいて、戦後に一気に仕掛けるというのは、有名どころではコカ・コーラがあげられる。第二次世界大戦中、すべての米軍従事者に5セントでコーラを提供すると言って、コーラをばらまいた。結果、戦争帰りの兵士たちはみなコカ・コーラのファンになってしまっており、米国内での認知度は今まで以上。さらに世界各国を転戦する中で、米軍人が愛飲する清涼飲料水ということで世界での知名度の向上にも大いに役立った。
米軍が負けることはないという信念あってこその戦略だが、同時に国内向けには軍を支援する愛国的企業というイメージアップもあったので、巧妙な作戦であると言える。
一方日本ではどうかと言うと、結果的にこれに似た戦略がとられたものがある。ハウスのカレーである。戦前からカレー粉の製造はしていたものの固形カレールーで天下を取るのは戦後である。戦中は軍需食料としてカレー粉が製造されたが、特に海軍兵にとってはなじみ深い食べ物であった。戦後は国民食としての地位を確立していく。
平和の時代、子供が主役の高度経済成長期にあたって家族の食事を鍋1つで賄えるというのは大きかった。調理するのに切る炒める煮るの3工程しかない固形カレールーはヒットすべくしてヒットしたと言えるだろう。
戦中に仕込んでおくだけが平和ビジネスの礎でもない。戦後に起業して、大発展したものもある。大阪のローカル企業の趣もあるサンガリア社である。この会社今では大規模ではないにせよアメリカにも進出しており、独特の形状をした瓶入りラムネでオリジナリティを出してそこそこの成功を収めている。
身もふたもない話をすると、コーラにせよ、ラムネにせよ、結局は香料と砂糖と炭酸水なわけで、ちょっと化学や料理が好きな人なら似たものの調合はそこまで困難でもない。ではこのビジネスが成功するかどうかのカギはどこかと言えば、純粋にマーケティングに帰結してしまう。これこそ平和の中でしか起こりえないビジネスだろう。何せコカ・コーラですら、戦中は兵士にコーラを配るぐらいしかできることがなかったとも言えるのだから。
※ 助手からひと言
間が空きすぎてすみません。私も多忙でして。
そうそう、ファンタは第二次戦中にドイツで発明され、戦後は西ドイツの経済強化策という部分もあって米国コカ・コーラ本社に商標が買い取られたとかどうとか。