セドナのブラックトルマリン その1
今回はまた旅のお話です。
クリスタルとの日常そのものが精神の旅のようなものだけれど、実際に物理的な移動を伴う旅もまた、クリスタルと共にあることで様々な気づきをもたらしてくれたり、何ならガーディアン的な、お守りにすらなってくれたりもする。
アメリカ・アリゾナ州の旅もまた、そんな様相だった。
言わずと知れた世界的パワースポット セドナ。
ここへ行くことになった前提は、世界一のミネラルショーであるツーソンミネラルショーへ行けることになったため。
友人がアメリカで車を運転できる方とお知り合いになり、お互い旅好きと言うところから話が盛り上がって計画が動き出したのだった。
いつかは憧れのツーソン。
そんな思いは石に関り始めてツーソンショーと言うものを知ってから薄っすらとはあったものの、意外と早く自分が行けることになった感覚があった。
数年前まではツーソンなんて言葉すら知らなったのに。
これもまた、石の引力みたいなものなのかも知れない。
そんなこんなで計画が進み、友人の希望や私の希望を盛り込んでドライバー兼ガイドを引き受けてくれたCさんが旅程の全てを計画して下さって、アリゾナ縦断ツアーへと赴くことになった。
時期はちょうど年明け。1月下旬から2月の初旬。
アリゾナの州都フェニックスでは、その年のそのタイミングでスーパーボウルが開催されていた。
真っ赤な砂漠。
飛行機から見下ろすアリゾナの大地は、その一言につきた。
カリフォルニアから山脈を越えてアリゾナ上空へ入った途端、大地が赤いのだ。
抜けるような青空と赤い大地は、なんか、見ているだけで乾燥する。
自分がこの大地に立つだけで体中の水分が蒸発して行くような気がして、
この土地に古くから生きるネイティブインディアンの民が、ホホバオイルを顔に塗る意味を体で理解した気分だった。
フェニックスの大都会からレンタカーを借りると先ずは北へ。
グランドキャニオン、アンテロープキャニオン等を廻る。
ただただ真っ赤な大地に真っすぐに、永延と続くかのように道が伸びている。
日本の高速道路みたいにサービスエリアなんてものは無いから、食料、燃料、地図、それらは自己調達であり、トイレも計画的に。
加えて私は車酔いが激しいため、なかなか大変な旅になることを初日で理解した。
日本にいたら見向きもしないマクドナルドが神様に見えるくらいだった。
アメリカ本土の内陸部って、こんななんだな。
それを初めて理解する旅路でもあった。
そんな大地に息づくスピリットと共に生きたのがネイティブアメリカンの人々であり、私達が車で廻る観光スポットのほとんどは彼らが大切に崇めて来た聖地である。
アンテロープキャニオンも、グランドキャニオンも、それらを感じさせるには充分な場所だった。
過酷な自然の中に暮らす人々は、助け合わないと生きていけない。
出会った人、道を尋ねたり、声を交わした人々は皆、旅行者にも親切だった。
ここまででも十分にこの大地のスピリットを感じるものでもあったし、グランドキャニオンでは過去の記憶であろう光景も瞼の内に繰り広げられる。
北部エリアの旅程を終えると再びフェニックス方面へと南下する。
途中、私の強い希望でメテオクレーターにも寄ってもらった。
メテオクレーターは巨大な隕石クレーターだ。
約5万年前という宇宙時間で言うと最近(?)のもので、世界で唯一ほとんど風化せずに残っている貴重な場所。
子供の頃に科学図鑑で見たものを、直に見て体験出来たのは感慨深かった。
月の表面もきっとこんな感じなのだろうと思わせてくれる巨大な隕石痕だった。
さて、そして、いよいよセドナへと南下する。
少しずつ、緑が見えたり川のせせらぎが見え始めて心がホッとしていた。
セドナの街は、小さくて可愛らしかった。
スポット的に点在するボルテックスの中央に町が出来た感じで、ニューエイジショップやクリスタルショップ、アートギャラリーなどが並んでいる。
以前書いたオーストラリアのキュランダもこんな感じだったが、スピリチュアル好きにはうってつけの街だ。
そしてクリスタルの買い付けがこの旅のメインテーマである私達は、俄然クリスタルショップに目が釘付けになる。
まだツーソンに向かう前だと言うのに(笑)
ちょっとだけ、ちょっとだけ。
と、言い訳めいたことを言いつつ町の中央にあった大きなクリスタルショップへ入ると、なんと良いタイミングでセール中である。
ツーソンショーの期間なのだからショップがセールなのは当然なのだが、お上りさん状態の私たちはすっかり舞い上がってしまった。
その状態でガレージの様にだだっ広い店内をぐるぐると見て回る。
今なら何とでも感覚的に、自分がどんな石を仕入れるのかは分かる様になったけれど、その時の私はまだショップも開設前の本当に買い付け初心者である。
そんなお上りさん初心者であった私はガレージの様にだだっ広くて、多種多様なクリスタルが並ぶ場所で何をどう探したら良いのか全く分からなくなっていた。
完全に、舞い上がっていた。
勿論ここで買わなくてもツーソンへ行けば良いんだから。
頭では分かっていても、ずらりと並ぶ石達からは離れられない。
そのうちに、ブラックトルマリンが並ぶ棚へとたどり着いた。
大小さまざまなサイズのショールトルマリンがずらりと並んでいる。
大きなものは拳よりも大きかった。
その中にあった収まりの良いサイズ感のものを一つ手に取る。
途端、スッと流れるエナジーが身体を抜けて行った。
同時に私の浮ついていた感覚までもスッと着地する。
あ、グラウンディングした。
そう感じる一瞬だった。
さすがはブラックトルマリンだ。
ショールトルマリンとも呼ばれる真っ黒いトルマリンは縦の柱状結晶となり、そのエナジーはひたすら不要なものを流し去る。
同時にこの時の私にはとても有効なグラウンディング効果があったのだった。
” 先ずいったん落ち着け ”
そんな声が聞こえて来るような、分かりやすい作用だった。
そこから私の浮遊感は収まり、改めて落ち着いて石を見ることが出来て
セール中の石を初買い付けしたのだった。
セドナのボルテックスの中で石と出会う。
これにはまだ続きがあるので、また次回。
橙香