待っていてもなにもはじまらないが、かといって終わるわけでもない。【ハチ飼育員の手記 4月】
4月某日。快晴。
飼育員を名乗っているが、まだなにも飼育していない。
営業部長が毎日のように
「ハチ、来ないっすね」
と声をかけてくる。
たしかにハチは来ない。来る気配もない。それは事実です。
しかし、もし数多の自己啓発書が説く法則にならうとするならば、
「ハチ、来ないっすね」
と毎日言い続けることによって
“ハチが来ないという現実”を引き寄せてしまっているんじゃないだろうか。
今後、社内でハチの噂をするときは
「ハチ、来ている」
「ハチを迎える準備はできている」
でお願いしたい。
先日こんなニュースがあった。
女王バチには、巣に新しい女王バチが生まれると、群れを連れて新居探しに出るという習性がある。これを「分蜂」という。
このニュースは、物件探し中のハチが一時休憩していた場所が、たまたま繁華街だったという話である。
ハチに興味がない人にとっては、きっと恐ろしい光景だったに違いない。
だがハチの来訪を熱望する我々としては、「歓迎 ようこそサンクチュアリ出版の屋上へ」という横断幕を持って迎えにいきたいほどだ。
九州では分蜂がはじまっている。
*
私が出社できなかった日、総務の人に巣箱の撮影をお願いした。
ハチの巣箱にはあいかわらず変化はないが、総務の赤嶺さんは几帳面な方だった。角度という角度から、巣箱のありのままの姿をとらえてくれた。
それをグラビア風にお届けしたい。
![画像1](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/10979529/picture_pc_78bdc2f1bcbac0de7731dd7055a09520.jpg?width=1200)
黙りこむキミ、振り回される僕
![画像2](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/10977233/picture_pc_f3e7aa5e49bf1150ad5d4cb3c3e1d2a4.jpg?width=1200)
待っているのはハチ? それとも……
![画像3](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/10982042/picture_pc_1bf698c860d0eb46a5fd90244f50e894.jpg?width=1200)
ガツガツ系じゃないよ。でも今日だけ……特別
![画像4](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/10982126/picture_pc_b2be55d2bd025c62838dcda33673571b.jpg?width=1200)
そんなに近づかないで
![画像5](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/10982204/picture_pc_ae37f083b301f56d86da59369e73803e.jpg?width=1200)
この世界から、キミ以外いなくなればいいのに
はい。
ハチがきてくれないと、報告できることはなにもない。巣箱の存在自体、忘れてしまいそうだ。今朝などは、はちみつを塗ったトーストを食べ終えて、そのお皿を片付けるころになってようやく思い出す始末だ。
公園や学校の花壇では、春の花が咲き始めている。
もう少し暖かくなれば、ハチを見かけるようになるかもしれない。
サンクチュアリ出版の屋上が、
彼らにとっての穴場物件になることを祈って。
飼育員 橋本圭右
橋本圭右(はしもとけいすけ)1974年東京生まれ。サンクチュアリ出版編集長。主に山と電車とファミレスで活動。編集した本。好きなものはゲーム、ジムニー、ベイスターズなど。
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![サンクチュアリ出版 公式note](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/8989092/profile_d2a91d17eedb9e0c50bcd5fa8d6e322e.jpg?width=600&crop=1:1,smart)