
椅子取りゲームの敗者の話 /短編小説
人生はまるで椅子取りゲーム。
恋愛できる人、結婚できる人、大企業に就ける人、お金持ちになれる人…
一般的に”幸せ”と呼ばれるレールに乗れる人は
椅子を勝ち取ったものではないだろうか。
じゃあ、椅子に乗れなかった者はどうなる?
考えた時には既にいろいろ遅かった。
これはそんな私の脳内の話。
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昔からクラス全体の行事や学校全体の行事が苦手だった。
あんなもの「孤独」をあぶりだす儀式
そうとしか思えなかったから。
自然とグループが出来ていく中で、
省かれないように目立たないようにそっと隠れてその場をやり過ごす。
残ってしまったら、
多くの視線に囲まれ羞恥心でいっぱいになりながら、
情けを乞うようにどこかに寄生する。
でも所詮は”寄生虫”のため、
そこに属することはできない。
中でも私は椅子取りゲームが苦手だった。
数の足りない椅子を取り合う単純なゲーム。
でも、ゲームの中では必ず漂う空気があるのだ。
最後まで残ってほしいと思う人間や、
残るのが当然だと思っている人間、
一番最初に脱落してね。という圧、
脱落すると仮定していた人間は最後まで残った時の空気は思い。
私はあれが大嫌いだった。
だから思い通りに最初に脱落をして椅子の取り合いをただ眺めていた。
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あれから20年経った今思うのは、
あの頃とさほど変わらないことが大人たちの生活でも起きていることを知った。
毎日毎日、
いろんなマウントの掛け合いをしている。
椅子取りゲームの椅子が”幸せ”というものに変わっただけだ。
私はただ、
そんな”幸せ”という名の椅子の取り合いを眺めていた。
でも、こんな生活もうやめてしまおうと思った。
ここに椅子がないなら違う場所の椅子を探せばいい。
余った椅子がどこかにあるかもしれない。
あの人たちの”幸せの価値観”の中で生きる必要はないのだ。
だから私はこのゲーム会場からおりよう。
そして自分に合う椅子を探しにいくのだ。
そう思いながら、どんどん地上から離れていく外の景色を見つめながら
私はこの街を後にした。
私のゲームはこれからだ。