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俳句と写真① 空気感の話

近い将来、通信技術が発展して視覚イメージに留まらず、他の感覚:味や匂いを他人と共有できる時代が来るかもしれない。         

それでも最後まで、肌で感じている”空気”だけは伝達されないことを願う。五感のあらゆるイメージを伝達できる世界で、唯一伝わらない感覚として残って欲しい。 伝わらないからこそ意味がある。空気・気温・湿度・雰囲気こそが今ここにいる今までここにいた、
存在した証明となる日。           


1919年、マルセルデュシャンが友人への土産にとガラス容器に”パリの空気”を詰めて送った。見えないもの、曖昧なもの。データ化できない複雑な媒体。繰り返して同じ体験を味わえる仕組まれた便利な世界で、再現性の「ない」体験を今しているのかもと考える。残らないし送れない。           
今いるその場所でしか触れられない風


 〈届かない 皮膚を流れる 春宵の風〉

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