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正倉院のフェルト

ウールのセーターをゴシゴシ洗うと縮んで固まってしまうが

羊毛を「わざわざ」ゴシゴシして固めたものがフェルトだ。
実はこのフェルトは古くから作られていて、靴や帽子や敷物ばかりでなく
モンゴルの移動式住居のゲルの壁もフェルトでできている。
どれくらい古くから作られていたかというと
中央アジアのパジリク遺跡というところから紀元前400年ころの壁掛けや鞍下に敷く布が発見されている。いずれも鮮やかな色や模様で細かい刺繍もしてあり高度な技術が見て取れる。

最近のフェルト手芸は細かい凹凸のついたニードルを使う事が多く、何度も刺して羊毛を絡ませてフェルト化させることが多いが、少し前までは石けん水を振りかけて形を整えながら手でゴシゴシこすっていた。
一方、元々あった実用品としての・帽子や靴等のフェルト作りの方は力が要るので伝統的に男仕事であった。
さて、壁掛けやゲルの壁など、大きなフェルトはどうやって作るのだろう。
さすがに手に余るので足や馬(!)を使う。

壁掛けや敷物くらいだとシートの上にほぐした羊毛を置いて
木の棒を芯にして太巻きのように巻いて
それを座った人たちが足の裏で前後に転がす。(足裏が気持ちいい ♪)
時々巻く方向をたて・よこ変えて、ゆがまないように整える。
ゲルの壁になるとかなり大きいので
羊毛の太巻きの芯にフックをつけ、ロープを輪にしてひっかけて
馬でごろごろ引いて歩く…さすがはモンゴル!

日本最古と思われる正倉院のフェルトは240×130cmほどの敷物で
薄い黄色地に青ねず色や明るい緑で植物の模様がついている。
中国大陸か朝鮮半島から到来したようだ。
正倉院はシルクロードの終点と言われるがなるほどフェルトもそうなのだ。

画像は自作の石をフェルトで包んだ文鎮。
ちなみに羊毛・フェルトについてはこんな本があって面白い。
“The Encylopedia of Hand Spinning” Mabel Ross INTERWEAVE PRESS
“new directions for felt an ancient craft” Gunilla Paetau Sjöberg INTERWEAVE PRESS
フェルトの歴史を調べていた時“new directions for felt an ancient craft”の中に
Shōsō-in collection,Nara,Japan
の文字を見つけたときは
はっとして何か信じられない気持であった。