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オレンジ色の光球が
小さな怪奇現象
初夏の夕、疲れた体で吊革につかまり、電車に揺られていた。
窓からは都会の街並みと空が見えている。
ぼんやりと外をながめていたら突然
空にオレンジの光球が瞬いた!
そこにE=mc2の文字と核分裂の連鎖反応の図が見えて
次の瞬間に衝撃波で砕けたガラス窓が襲い掛かってくるのと
爆風でひっくり返る電車が熱で焼きつくされるまでのことが見えたが
目を見開いて固まった自分を乗せて
電車はカタタン、カタタタン、と軽快に走り続けていた。
空にはまだオレンジの光球が明滅している。
振り向くとオレンジの夕陽が山の連なりの上にあった。
後ろの夕日が窓ガラスに写っていたのだった。
吊革をつかむ腕はこわばり
思い出したように胸がバクバクと高鳴ってきた。
日常は一瞬で無くなる、と思った
17年前の初夏のことだった。