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チーズが苦手だった

子育ての風景
勉強

はるかのむかし
子どもの頃チーズが苦手だった。
当時、チーズは今ほどたくさん食べられてはおらず
自分の中では「お酒のおつまみ」という位置づけだった。
父親がほんの少しずつチーズを口にしながらウイスキーを啜っている
そういうイメージ。
あと、大晦日のごちそうでお皿に並んでいる四角い薄く切ったチーズ。
なんだかおいしそうに見えて、一切れ取って口に入れたが
ちょっと
噛むと「にちゃにちゃ」と歯にくっついて
妙な匂いがあって
そのどちらも苦手で
チーズはいつまでも口の中でその妙な存在感を主張し続けていた。
だがしかし
ウチでは手を出さなければそれで済んだのだが
問題は学校の給食ですよ。
当時はとにかく「全部食べましょう」だったので
イヤだなあ苦手だなあ匂いもイヤだしなあ
と思いつつも「頑張って」口に入れてぐちゃぐちゃと噛んで
早く口の中から無くなれと思って食べていた。
で、そんなある日
多分隣の席の人が
「チーズってかまないでなめてると甘くなるよ」
という重大情報を教えてくれたのだ。
「え!ホントに!?」
そこでアルミの皮をむいて四角いチーズを取り出して
試しに丸ごと口に入れてみたら
しばらくして
じわあああーっと甘みが口の中に広がってきたのである ♪
ホントだ!甘い ♪
それは砂糖の甘みとは別種のたんぱく質と脂質の旨みだったのだ
と、今ならワカル。
かまないせいか匂いもキツくない。
それ以来チーズは最初に「やっつける」食べ物ではなく
最後に口に入れてあめのようにゆっくりと味わう楽しみに変わった。
もしあのときこの情報を教えてもらえなかったら
自分がチーズの旨みを楽しめるのは何十年も先のことだったのではないか。

学校という所は
こういうチャンスにも巡り合える場所なのである。