クルミの思ひ出
子育ての風景
今日見たannonさんの記事で思い出したことを。
(annonさん、勝手に引用しました)
子どもの頃、茶の間に火鉢があって
そこではいつもしゅんしゅんと鉄瓶が音を立てていた。
その炭火の中に火箸で殻のままのクルミを埋め込んで焼いて食べた。
慎重にひっくり返しながら焼いていると
段々殻が焦げてきて、香ばしい匂いがしてきて、その匂いが大好きだった。
その内、殻の上、“とんがった”ところが口を開ける。
それが焼けたしるしだった。
火箸で焼けたクルミを挟んで、そろそろと隣の台所に持って行って
水道の水をちょっとかけるのだ。
時には一部が赤く炭火のようになっていることもあって
水をかけると「ちゅんっ」を音を立てた。
さてそこでそのクルミをまな板の上に載せて
まだ温かい殻の口を開いたところに包丁の刃を入れてやると
クルミはあっさりと二つに割れた。
あと、お風呂の焚き付け場のコンクリートの上や
玄関の上がり口のコンクリートの上に載せて金づちで叩くこともあった。
この時は棒鱈を叩くときとは逆で
決して強く叩かないで・用心深く加減して・ひびが入る力加減で
コツコツと色々な方向から叩いて殻全体に割れを入れていくのだ。
そうすると、中の実をあまり壊さないで殻を外せる。
殻が割れた・ひびの入ったのを茶の間に持って行って
チラシの裏が白いヤツの上で
今度は壊れた殻を注意深く取り外したり、爪楊枝で“掘り出す”。
大きな実が砕けずに取れるとうれしくて食べるのがもったいなかった。
実際に口に入るクルミはたくさんではなかったが
食べるためのプロセスは、とてもとても幸せな時間の過ごし方だった
と、クルミの殻の焼ける匂いとともに思い出す。
その後
赤い網に入った売り物の大きなクルミをもらったことがあった。
実のてっぺんの「とんがり」が無くて円い。
実はたくさん入っているし殻は薄くて割れやすくて食べやすかったのだが
何だか渋くて大味で、あまりおいしいとは思えなかった。
こちらは“洋グルミ”で
この時初めて“洋グルミ”と“和グルミ”があるのだと知った。
自分が今まで食べていたのは“和”の方だったのだ。
殻がとても硬くて厚いオニグルミである。
何年もあと、白胡麻を煎っていてちょっと焦がしてしまったら
何だかクルミの焼けた匂いを思い出した。
胡麻が焦げるとクルミを焼いた匂いに似るのだな。
そういえば
以前遺跡発掘の作業員をしていた時
縄文時代の遺跡で焚火の跡が出てきて
そこに炭化したオニグルミの殻がいくつも重なっていた。
ああ、これはクルミをここで焼いては割って食べて
残った殻を火にくべたのだろうと
作業員の「おばさんたち」で話したものである。
大きな川のほとりの遺跡であった。
オニグルミは川沿いの湿った土地を好むのだ。