飛行機の窓から
昔々
8月に紀伊半島上空を飛んでいたとき奇妙なものに目を引かれた。
遠く南西の方向、分厚い雲の上にずんぐりした指のような
灰色の柱が何本か一列になって突き出ていたのだ。
四国に向けときおり雲を横切りながら飛行機は高度を下げつつあって
雲の上に突き出ているその「柱」はうすくピンクがかっていて
目の前の雲よりはるか遠くにあるようだった。
作り物のように並んでいるそれらはおそらく積乱雲だろうと。
とすると高さは10000メートルほどのはず。
なるほど圧倒的な高さと密度を持っている。
それならば
あの灰色の柱の下では今頃猛烈な雨が降っているのだろう。
気象レーダーで夏によくみられる降水量分布図で
日本の南方海上に点々と連なる赤い四角と
この灰色の「柱」の列とが頭の中で重なった。
今、気象レーダーの図を見れば
あの柱の部分が赤い四角で表されているはずだ。
あの赤い四角一つが・あの灰色の柱なのか!
10000メートルの積乱雲を真横から見るという
飛行機だからこその風景に出合えたのだが
写真を撮れなかったことが思い出すたびに本当に悔やしい。
さて今度は冬の話
やはり昔々、2月に飛行機で東京に飛んだとき。
朝、新千歳空港を離陸してほどなく苫小牧(とまこまい)上空にて
雲の間にサンピラーを目撃した。
ニュース画像などとは段違いの迫力で
明るい黄金色の光の粒が巨大な柱となって輝いていた。
まさに「神降臨!」という光景。
思わず飛行機の窓にしがみついて顔をベタ付にした。
眼鏡が窓に当たって邪魔だったが
外から見たらすごい「ヘン顔」だっただろう。(笑)
サンピラー現象は厳冬期の北海道で有名だが
小さな平たい氷の結晶が地上に落ちてくるとき空気抵抗でほぼ水平になって
そこに横から陽の光が当たることで起きる現象だそうだ。
(例えば紙を静かに落とすと、ほぼ水平なまま
あっちへすーい、こっちへすーいと揺れながら落ちていく)
厳冬期・早朝か夕方・風がない、という条件が必要なので
いつでも見られるわけではない。
結晶が水平になって散らばっていることで
太陽の光が左右には反射されず、上下にだけ反射されるために
縦方向の光の柱が見えるのだと
説明を何度も読んで考えて考えてやっと納得した。(ハアハア)
確かに結晶の向きがバラバラだったら
光はすべての方向に反射してしまうから「柱」にはならない。
厳寒の土地、旭川にも住んだことはあったので
ダイヤモンドダストは何度も見たが、サンピラーは見たことがなかった。
それがまさか飛行機から見ることになるなんて!
油断大敵・棚からぼたもち
うかうかしてはいられませんなあ。
そして最後にもうひとつ
ある夏、飛行機に乗った時、窓からタテの虹が見えたことがあった。
まるで虹色の帯が中空に貼りついているようだ。
いやそれだけじゃなく
このタテの虹は太陽の隣に出ていた!
今度は撮ってやったぜー ♪
ご存じの通り普通の虹は地面から空に大きな弧を描いていて
人が太陽を背にした状態で・太陽と反対方向の空に出るものだ。
色は、弧の上側が赤色で下側がすみれ色だが
タテの虹の色は
太陽に近い方・左側が赤色で、遠い方・右側がすみれ色だった。
それは夕暮れ時で・席は左側・翼の横で
太陽は左側・ほぼ真横・やや後ろにあって
夕陽が翼の後ろ側の方で、虹が翼の前側に見えた。
飛行機の下には雲が安定した層となってじゅうたんのように広がり
頭の上には薄い雲が広がっていた。
飛行機と同じ高さにもごく薄い雲があったものの
おおむね飛行機は低い雲と高い薄雲との間を飛んでいて
ときどき上の方に少し濃い雲がかかると
そこにくっきりと虹色が現れた。
もしかしたら太陽の反対側・左側にも出ているかもと
小さな窓に顔を押し付けて頑張ってみたが見ることはできなかった。
残念!!
帰宅してから調べてみたところ
これは「幻日」という現象のようだ。
氷の平たい結晶に太陽光が反射して起きるとか。
風が弱いと平たい結晶が地面に対して水平にそろうので
反射する光の向きがそろって
まるで太陽のように見えるので「幻日」なのだと。
適当に向きが散らばっていると虹のようにも見えるということなので
私が見た結晶面の向きは適当に散らばっていたのだろう。
サンピラーと同じく水平に揃った氷の結晶による、違った現象なのだ。
飛行機に乗ると色々と地上とは違うものが見えて面白い♪
そういうワケで
乗り物では必ず窓にへばりついて「お外」を見る私は
それが飛行機でも必ず
窓にへばりついてひたすら「お外」を見てしまうのである。