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屋根からの怪音

小さな怪奇現象

あれはもう何十年も前のことぢゃった。
古い木造平屋に住んでいた時のこと。
ある日、部屋にいたら上の方から
どるぅーーー
という音が響いてきた。
え、ナニ!?
とは思ったが、それきりで止んだので「ナンだろか?」で終わった
のだが
その後も時々この音が響いてきて
工場の機械の音だろか?それにしては音が近い、だとか
近所でドリルを使っているのが響いてくるのだろか?だとか
色々考えてはみたが、聞いたのが自分一人だけだったので
あまり夫にはとり合ってもらえないでいたところ
ある日曜の早朝、まだ布団に入っていたときに
それが響いた。

どるぅーーー

あ、これ、この音だよ!!

もう一度、響く。

どるぅーーー

玄関の方、あのあたりからだね!と
パジャマのまま二人で布団から飛び出して
サンダルをつっかけて玄関を出て振り向いて屋根の上を見ると

いたんですよ

アカゲラが

屋根の端に30㎝くらいの木の棒が立っていて
これは道路から電話線(?)を引くのに取り付けてあったもので
その短い、虫がいるとも思えないただの細い角材に
「なにか?」という風情でアカゲラがとまっていて
私たちが見ている前でクチバシで細い角材を叩いた。
どるぅーーー
あ!この音だ!
アカゲラはそれを別れの挨拶のようにして、飛んでいってしまった。
そしてそれ以降、「怪音」はしなくなってしまったのである。
別に、また来て鳴らしてくれてもいいのにね、と少し残念だった。

ちなみに
アカゲラなどキツツキの仲間は、樹木の中の虫を採るためだけでなく
縄張りを知らせたりするのに音を立てるもので
これは「ドラミング」と呼ばれる。
あのアカゲラは太い樹木を叩く固い高音よりも
柔らかい低音の響きが好きだったのかもしれない。
二人してパジャマ姿でジャマしてごめんな。