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共犯者

子どもを近所の幼稚園に送って帰ってくると
女の子が道端で泣いていた。
同じ幼稚園に通っている子だ。
転んだらしく、膝に土がついている。
しゃがんで、膝の土を払ってやって
「幼稚園、行こ」と言っても、泣き止まない。
「転んだァァァ」「もう、行けなァァァい」
そうだ、この子の家では
ついこの間赤ちゃんが生まれたばかりだった。
それでお母さんがこの子を送って行ってやれないんだ。
「困ったねえ」
で、その子に顔を寄せて囁いた
「転んで泣いたこと、お母さんには内緒にしてあげるから」
「だから、おばさんと幼稚園行こ」
その子はしゃくりあげながら「うん」とうなづいて
ぎゅっと手を繋いで幼稚園に行った。

なんだか「共犯者」になった気がした。