ジプシーの深い知恵
以前紹介した本
「ジプシー生活誌」小野寺誠 NHKブックス
この時は彼等の中での手洗いの持つ意味について書いたが
今回は良く知られていた「血の復讐」について。
これは少し古い本なので「ジプシー」という名称を使っているが
イマドキはロマ族と呼ばれている。
古来、誇り高いことで知られ
誰かに身内を殺されたら必ず仇を打つという「血の報復」が知られていた。
…が
それだと報復が永遠に続いてしまうのでは
と思っていた。
本では、例えば父親が殺されたらその息子が報復するのだが
夫を殺された妻が報復を望まないときには
相手の名を息子に教えないのだと。
つまり、報復はそこで止まる。
そうか
黙っているという手があったか。
何か大きな争いがあったら・長い争いが続いていたら
そこには大きなわだかまりが残り続ける。
恨みは忘れられないし悲しみは晴れることがない。
辛い気持ちを晴らすことなく生涯黙って心に持ち続けるのは
想像もできないほどに苦しい人生だ。
それでも、これ以上の苦しみの連鎖を続けたくないという気持ちは
苦しみを自分の内に閉じ込めることを選ぶ。
争わないで
独り占めしないで
押し付けないで
生きていくのも楽じゃない。