
お日様の色は
幼稚園のときクレヨンでお日様を描いた。
回りの子は赤で描いていた。
でも、ヘンだ、ちがうよ、と思った。
外でお日様がどう見えるかと、一生懸命に見たから。
絶対に赤くない。
クレヨンの赤じゃない。
金色と白とミカン色と青とがぎらぎらと激しく入り混じっていた。
見えたとおりに描こうとしたが
多分6色くらいの太いクレヨンではどうにも思ったように描けず
もどかしいままに描き上げたら
先生に
あら、これは何?お日様?おかしいでしょ?と言われた。
私はこう見えたと一生懸命に訴えたが、聞いてはもらえなかった。
家でもわかってもらえなかった。
自分が親になってから、奥本大三郎のファーブル昆虫記を読んだら
ファーブルが5歳のとき
太陽は目で見ているのか口で見ているのかを試した話があった。
口を閉じて目を開けると見えたが
目を閉じるといくら口を大きく開けても見えなかった。
ファーブルは太陽は目で見ていることを「発見」して
よろこんでその「発見」を大人たちに報告したが
大人たちはそんなことは当たり前のことで
本当におかしな子どもだと
とりあってくれなかった。
ファーブルも私も5歳のときに
似たようなことを経験したんだとちょっとうれしかった。
そうだ
あれは確かに私のお日様だったのだ。