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同じ名前で違うモノ

言語

昔々
アゲハの幼虫がエサを食べなくて・・・
と困っている知り合いがいた。
お友達に幼虫を譲っていただいたのだけど
エサには三つ葉をあげるといいよ、と聞いたので
庭の三つ葉をやっているんだけど全然食べなくて
だんだん小さくなっちゃって・・・
ふんふんと聴いているうちにふと気が付いて
「三つ葉って、もしかして、クローバーのこと?」
と聞くと、そうだと言う。(ぴんぽーん!)
そこで
アゲハが食べるのは、お吸い物に入れる方の「三つ葉」で
その「三つ葉」がなかったらパセリでも人参の葉でもいい、と伝えた。
その後パセリを与えたら猛然と食べ始めて
この幼虫は無事さなぎになって・羽化して飛び立ったということだった。
同じ「三つ葉」でも違う「三つ葉」だったのだ。
そうだ
同じ「ツユクサ」でも違う「ツユクサ」もあった。

ツユクサ

ツユクサと聞いてまず自分の頭に浮かぶのはムラサキツユクサだったが
これは園芸種で庭に植える花。
しかし野草のツユクサは別の植物だ。
ちなみに
野草のツユクサの方は昔染物の下絵を描く絵の具に利用されていた。

水に溶けやすく、染めて洗うと下絵の絵の具が落ちて残らないから。
面白いことに、このツユクサの花弁の液は紙に何度も塗っては乾かして
紙に染み込ませた状態で運ばれた。
使うときは、ぬらした筆で紙をなでれば絵の具になった。
一種の固形絵の具と言える。
さてそこで、その色はと言うと
ムラサキツユクサの花は紫で、ツユクサの方は澄んだ青。
染物の下絵用の絵の具にされたのはツユクサの方だが
私は子どもの頃庭のムラサキツユクサの花で白い布を染めて遊んだ。
父の着古したワイシャツを切ったものだったと思う。
どちらのツユクサも花を絞ると、きれいな色の汁が出るから
「ツユクサの花で色水を作って遊んだ」
と聞いても、それだけではどちらのツユクサなのかはわからないのだ。
実にメンドクサイ話ではないか。

いやまったく、言葉ってやつは・・・
このように面倒な言葉という道具を正しく使うには
丁寧なやり取りで細かい軌道修正をし続けるしかない、と思う。