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空は電波でいっぱいだ

コミュニケーション

昔々、アマチュア無線を盛んにやっていた時期があった。
元々は登山で連絡を取るのに無線免許を持っていた方がいい
と考えたからだ。
当時携帯など無かったので無線機しか頼るものは無かったし
一般人の山歩きならそれすら無いのが普通だった。
さて普通登山に携帯していけるような無線機と言うと
144MHz帯の周波数を使うトランシーバーだった。
この周波数帯の電波は直進性が良く・逆に言えば回り込むことができない。
目の前に高い建物など障害物があったらそこで跳ね返ってしまい
その向こうには飛んでいけないのである。
だから山の尾根など開けた場所だと100㎞でも飛ぶが
谷に入れば電波は山に邪魔されて空へと抜けてしまうほかない。
これは良く「見通し距離は飛ぶ」という言い方をする。
初めて山に無線機を持って行ったのは大雪山系のどこかで
見通しが良くて東も西も開けていた。
いよいよスイッチを入れるといきなりたくさんの電波が飛び込んできて
いくつもの人の声が入り混じって聞こえてきた。
普通にはここまで入り混じって込み合うことは無いが
ゴチャゴチャと賑やかに聞こえているのは実は自分たちだけで
東の人たちには西の人たちの声は聞こえていなくて
西の人たちには東の人たちの声は聞こえていないのである。
それは私たちが立っている山に邪魔されているから。
東西から山を越えて飛んでいく電波を

山の上だからこそ受信できていたのだ。
大雪山系をはさんで
東の帯広や釧路からの声と
西の札幌や苫小牧からの声を聞くことができて
目には見えないが空には電波が飛び交っているのだと実感できた。
登山と無線をやっていたおかげでできた面白い経験であった。