2012年のこと①
2012年。今から8年前。
この年の4月に生活ががらっと変わった。
変わったというか、変えた。自ら。
まず、とある酒場へ足繁く行くようになった。
昼間は酒屋で夕方5時を過ぎると立ち飲み屋になる店に毎晩のように通った。帰り道の逆方向にあるのに、わざわざ通った。
マスター選りすぐりの日本酒目当てに常連客で毎夜賑わっていた。
そのお店は2004年に父に初めて連れて行ってもらったところで、その時は父の上司も一緒で、これから社会人になるにあたってのあれこれをアドバイスではなく、半分怒ってる感じで説教された。それまで飲み潰れたことはあったが、酔いも感じないのに帰宅するなり悪酔したことを鮮明に覚えている。大学院の卒業式の前夜のことだった。
それから8年経って、久しぶりに足を踏み入れた。まずは大瓶を飲み干し、おでんや乾き物をアテに、マスターおすすめの冷酒を2杯飲むのが常だった。
あー、なんという解放感。
自分の給料で誰に縛られることもなく、仕事後の程よい疲れも一緒に飲み干せるような場だった。
マスターは当時「俺が死んだら君ら飲む場所なくなるぞっ」と冗談まじりに笑いを取っていたが、今から2年前に亡くなられた。あの時の笑顔が忘れられない。こんなに早く逝ってしまうなんて。
初めの解放感を味わう酒から、徐々に良くない酒になっていった。
いつの間にか自分の背負った運命みたいなものにクダをまきながら飲む酒に変わっていた。
今、転職して何の因果かその酒場のすぐそばのオフィスで働いている。
あの時は暗い酒だったけど、今は少しばかり?は明るい酒の飲み方になったのをマスターに見て欲しかった。話しも聞いて欲しかった。
必要な時に人はいない。
これも運命なんだろう。