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読了。燃え殻著作ボクらたちはみんな大人になれなかった。2017年6月30日

燃え殻(@Pirate_Radio_)という人に、ボクは会ったことが無い。だが、燃え殻さんに会った人ばかりと会ったりする。どんな人かを尋ねるとモヤっとする言い方で煙に巻かれてしまう。もともと他者による評価なんか、実際会ったら吹っ飛んでしまうもんだとも思っているけど、なんだか統一されたモヤっと感が不思議で、面白い。

2017年6月30日、cakesで連載された燃え殻さんの小説が出版された。前日の29日東京の大きな書店ではすでに新書コーナーに並んでいた。手を伸ばしかけてやめた。明日になれば、地元の小さな書店に着くからだ。

返信先: @Pirate_Radio_さん
「いつ出るかわからない」
「ボクたちはみんな大人になれなかった。(たぶんこのタイトル)」
「たぶん新潮社」
それで地元のとても小さな本屋に3カ月前に予約してあります。
午後3:50 · 2017年5月15日

「たぶん新潮社」というのは何度目かに来店時に付け加えて言った。そこで店主からその日に店を閉めることを告げられた。つまりその1日だけが新書コーナーに並ぶ日なのだった。

6月30日、大会議室の壇上で1年の実績とこれからの展望を、キーノートを使い話していたら、数日前に治った胃痛がしてきた。今日はコテンパンにやられたんだ。

長い会議を終えると夕方だった。ダッシュして地下鉄に乗りこんでなんとか間に合った。

店主は、いつもの場所に座っていた。
「はい、これですね。」と
本を差し出して、お金を払った。
二、三歩後ずさりして、新書コーナーの棚を横目で見た。
店主の綺麗な文字のPOPがあるが、本は無かった。
ボクのしぐさを見て店主が、
「午後から急に売れ出してね、ここにあると思わなかったようだった。皆さん嬉しそうでカバー付けるか付けないか悩んでいたよ。」と、静かに本屋の店内に向かって言うように話した。

ボクも悩んだ。それでもカバーしてもらって、お釣りをいただくと、
「ありがとうございました。お疲れ様でした。」
本日二度目の深いお辞儀をした瞬間、ぽろぽろと3粒の涙が不意に溢れた。

近くの喫茶店に入って、読み始めると連載していたものとは違う言葉がより深く、あの世界を彩っていた。ネタバレはしない主義なので言わないが、cakes連載のものと少し違うが、一気に土砂降りの雨を浴びたような感覚で読んだ。

ボクは、良くも悪くも読むのが速いので、速読の業者の方の測定で「あっ必要ないですね〜。」と言われてから、なるべくゆっくり読もう読もうとしたのですが、少し痛みを伴う没入感に勝てず読み終えました。

今から何年前だろう。燃え殻さんのフォロワーが2万から3万になった瞬間を密かにお祝いしたことも、お酒を飲みましょうといつか言った。

海賊放送という意味の名前の人が書いた、どこにもないようで、どこかにある人間がいるがゆえ上下する東京の体温と湿度の、切なくも痛みを伴う愛すべき空気感を感じました。そして、小説家が誕生する瞬間にも立ち会った気がする。
それからがもう始まっている気がしますね。
出版おめでとうございます。燃え殻さん。

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