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銭湯での会話と月の見えない雨の日

今週、ギリギリで映画「ムーンライト」を観ました。
感想や映画評は、書かずにおきます。

ただ、この映画を上映している映画館に、私は忘れられない人に会いに行く感覚がありました。

船舶と貿易そして造船の会社に父親がいたせいか、子供の頃にはよく外人の人が帰るといました。
日本の銭湯を珍しがって一緒に入ったのです。ラッセルさんという黒人のおじさんに、銭湯の入り方をチビな私が教えて、彼は壮絶な生い立ちを絵本のように私がのぼせるまで話しました。

ラッセルおじさんの家には、シャワーがあってもお湯が出ませんでした。行政によって露骨にガスが切られていたのです。たくさんの兄弟と、雨が降ると貴重な石鹸で、外でシャワーの代わりにした。苦しくても、いつかお湯が出る家に家族で住むことが夢だったと私に話してくれました。そう遠くないアメリカでの話です。

人と話しをして、目をそらさずに聞き入ってしまうことが、私にはあります。
ラッセルおじさんと42℃の銭湯の中で、おじさんは目をそらさずに話してくれました。不思議なことに、おじさんの子供の頃が浮かんできた。銭湯の脱衣所で香水をつけようとして、番台の爺に相談を私がしました。香水をおじさんは、銭湯の外で付けました。

映画を観終えたあと、ラッセルおじさんと幼い私のあいだの銭湯での会話や、最近知ったジャズクラブという名前の香水を思い出した、雨降る夜です。

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