内なる狼に
年間500件を超えるといわれる、子どもの自殺について。
お付き合い頂ければ幸いです。
人の痛みのわかる人になりなさい、と教訓を垂れる大人がある。
そのわけを、人の痛みがわかれば人に優しくなれるからという。
半分は正しい。
経営者やスポーツ指導者は、相手の嫌がることをしなさいと教える。
そのためにはやはり、人の痛みを知らねばならぬ。
弱点を。
優しいだけではいけない。
この能力主義の世にあっては。
か弱い者は、狼に食いころされる。
ゆえに弱きは罪である。
そう教えられた子羊は。
9月1日は休み明けということもあって、子どもの自殺者数がひときわ多いといいます。
学業不振、進路や家族関係の悩みが理由の上位とのことですが、そういう子どもたちはきっと、今時分は憂鬱であるに違いありません。
休暇が終わると思えば憂鬱になり、自殺を願うような子は素直に他者を信じているのでしょう。
あるいは懐疑は悪しきことだと教えられ。
死にたくなるような現実を突きつけてくる他者を、信じている。
羊が狼を信じるように。
おのが罪を疑わず。
そうして内なる狼に、
他者とは、偽預言者とは、他ならぬこの私のことであるといえる大人はどれほどいるでしょうか。
このような世界は正しいと胸をはっていえる大人は。
もし正しい世界があるとしたら、そこには懐疑だけがない。
内なる狼に、懐疑を差し向けましょう。
お読みくださりありがとうございました。