
指す将順位戦9th自戦記 A3・B1 入れ替え戦 昇級プレーオフ (vs Luke二段[1701])
今期正真正銘の最終局。
これまでは最終局を迎える前に昇級が確定していたが この一局の勝敗で昇級か決まるというのは初めての経験。A級への道は拓かれるだろうか。
【対局前】
◇対局相手の印象
純粋振り飛車党
相振り飛車も厭わない生粋の振り飛車党
対抗形の際は先手番では三間飛車、後手番では角交換振り飛車を主力としている印象。
あとはYouTubeの将棋動画によくコメントしているのを見かける。

Luke二段は新規参加者のためチャート図がない。
自認棋風も不明。自分の棋風って他者が抱く印象と違うこともあってむしろ難しいよね。
「筋トレも最近始めました」とあるが、体力はかなりありそう。

なんですかこれ。
加えて超早指しのイメージがある。

Xのポストを見た感じは勉強熱心な印象を受けた。



勉強してる振り飛車党って一番苦手なタイプだ……。
勉強してる居飛車党相手には精度で上回れば苦しめられるんだけど、振り飛車党は不利を承知で指してくるからマウントの取り方がイマイチわかっていない。
相居飛車は評価値で勝つ
— 最速キメ (@Sanaga_Ambition) August 5, 2021
対奇襲戦法は経験値が争点だから次善手以降で応対し続ける
対B級戦法は相手がやりたいことをやる前に攻め潰す
……みたいな大まかな指標があるんだけど対振り飛車にはどこで戦えばいいのかまだイマイチ掴めてない。
Luke二段はどちらかといえば終盤型に見えた。
終盤勝負になると厳しいから序中盤で圧倒的に突き放す必要があるかも。
◇対戦成績
初手合い
「緊張感を持った対局の経験を積みたかった」と指す順に参戦してきたLuke二段だが、初参加でこんな鬼勝負を経験するとは。
◇事前準備
[▲先手番]
こちらが先手番の場合は対角交換振り飛車を想定して対策を用意する。
この戦型に対しては試行錯誤している段階だが、本局はマリンブルーさんの研究をベースに組み立てる。

互いに落ち着いて駒組みをするとこういう感じになりそう。

手数はズレているが、コータス-Luke戦とほぼ同様の進行
[△後手番]
後手番の際は2手目△1四歩という変則的なオープニングでペースを握りたい。
1筋を受けてきた場合は相振り飛車にして、こちらは中住まいに構える。
今期4回戦では矢倉に組むことで相居飛車の感覚を持ち込もうと考えたが、本局はその改良版だ。
こちらは9筋を受けなくても狭くならない陣形に組んで主張を作りたい。

1筋を受けてこない場合は即突き越して急戦を狙う。
部分的には新鬼殺しに近いが対振りであることと1筋の関係によってまた違った作戦になっていると思う。

▲6五角が気になるが△5四角で互角に戦えるとみている
展開によっては△1六歩が成立するのでそれを狙っていきたい
~対局前まとめ~
先手番はKKS対策で▲3七桂への対応によって5筋位取り調と地下鉄飛車を使い分ける。
後手番は△1四歩で対応をみる。
Luke二段にとっても経験値が浅い将棋に持ち込んで、序盤で取り返しのつかないリードを取るのが理想。それは相手依存なのでなんともだが自分のペースでリードを取りにいきたい。
【対局開始ッ!】
先手:SaisokuAmanogawa(1737)
後手:ecl_talisker(1701)
(↓対局棋譜と振り返りは下記リンクからどうぞ!)
https://shogi.io/kifus/261014
◇急所の局面(50手目△2五桂まで)

後手から強引に一歩取ってきた局面で、ここでは素直に▲2五同桂、あるいは▲2五同飛と取ってしまうのが良かった。
本稿では▲2五同桂の進行を掘り下げていく。
まずは▲2五同桂を△2四歩と狙ってくる手が気になる。
[基本図]以下 ▲2五同桂 △2四歩 ▲3三桂成 △2五歩 ▲2二成桂 △2六歩 ▲3四角 →[a-1図]

途中▲3三桂成に△同銀は▲5五銀で角が死んで先手が良いので飛車の取り合いになる。
この形で飛車の取り合いは先手有利というのを覚えておくだけでもだいぶ違うと思うが、これだけだとまだわかりにくいのでもう少し先まで進めてみたい。
[a-1図]以下 △4九飛 ▲3一飛 △1九飛成 ▲1一成桂 △6四歩 ▲3五桂 △4二香 ▲4五香 →[a-2図]

互いに飛車をおろし合い、先手の銀冠は下がスカスカで怖いようだが冷静に見ると持ち駒がなく後手から有効な攻めはない。
右辺から着実に迫っていって先手が優勢になる。
[基本図]から▲2五同桂に△2四歩は上手くいかなかった。では一歩補充した狙いを初志貫徹で△6四歩はどうだろう。
[基本図]以下 ▲2五同桂 △6四歩 ▲5三桂成 △同金 ▲4五桂 △6三金 ▲3三桂右成 △6二飛 ▲2三飛成 →[b-1図]

桂頭を狙う△6四歩には、取られそうな桂馬を使って▲5三桂成→▲4五桂→▲3三桂右成という手筋があった。
▲5三桂成に△同銀は▲3三桂成→▲5五銀で良い。
綺麗な駒運びで実戦よりさっぱり飛車先突破に成功。
ただ後手からの反撃もあるのでもう少し進めてみる。
[b-1図]以下 △6五歩 ▲4三成桂 △6六歩 ▲4九角 △4五銀 ▲6四歩 △同金 ▲5三成桂 △4六銀 ▲6二成桂 △5七銀成 ▲同金 △6二金 ▲4一飛 △7一桂 ▲5三銀 △6三金引 ▲6二銀成 △同金 ▲5三金 △5二銀 ▲6二金 △4一銀 ▲5三龍 △3六角 ▲5一龍 △6一桂 ▲7一金 △同玉 ▲6二金 △8二玉 ▲6四桂 →[b-2図]

△6五歩→△6六歩には手抜いて攻め合う指し方も有力なようだが、▲4九角と逃げておいた方が手堅い。
以下二枚飛車で攻めていって先手が指しやすい。
上記の手順は一例だが、△5二銀の受けには飛車を見捨てて▲6二金で△4一銀に▲5三龍→▲5一龍が上手い手で、これで一気に明快になる。
[b-2図]まで進めば銀冠が健在な先手が勝勢だ。
後手陣は鎮火できず一手一手だろう。
【対局後】
◇本局の振り返り
プランから外れたなかで序盤は有利を築けたが、そこからLuke二段が企んだ通りの手を指して逆転を許し、そこからは正確に対応されて負けてしまった。
こういう逆転タイプ、言い換えれば一回は有利をくれるタイプには作戦どうこうというより純粋な棋力が大事なのだと思う。
棋力を高めればどんな相手でも倒せるだろ というのは間違いないのだが、なんと言うかこの手のタイプは作戦で有利を取ることに意味がない……とまでは言わないがそれは承知で捲りにくるので、棋力がある一定のラインを超えない限り絶対勝てないし、逆にラインを超えれば何回やっても負けない相手になるのだと思う。
ちょうどこれからオフシーズンに入るので、指し手の精度を高められるように充実した時間を過ごしたい。
◇最後に
A級区域に踏み入るのはまだ早い、ということで連続昇級は叶わなかった。
指す順初参加からの成績を見てみると、
第7期指す順 → 2位
第8期指す順 → 2位
注目局アワード → 2位
第9期指す順 → 3位
ということでここにきて初めて2位以外を取ることになった。どうせなら1位が良かったよ。
結果論ではあるものの、8回戦(口火戦)の将棋を勝っていれば順位差で2位で直接昇級だったのが悔やまれるが、あれを負けたのはアクシデントではなく単純に自分の実力なので結果はそのまま受け入れている。
あと2つの敗局は1回戦(ポール戦)と4回戦(けい戦)とどちらも今期昇級者が相手だった。
1回戦はこれまでの対局からしても割と好調な状態での対局だったと思うので、それで負けるのは相手が強かったというほかない。
解析しても相手は疑問手悪手0だったし、今期B級1組総当たりで対局してみて頭一つ抜けている印象だった。
当時の自戦記では「これがB級1組のスタンダードだったら修羅の道になりそう」と振り返っていたが、それは杞憂に終わった。
しかし来期A級昇級を目指すからにはあのレベルに勝てるようにならなければいけない。
問題は4回戦で、これは振り飛車を採用しての対局だった。
自分の将棋に柔軟性を持たせるためというのもあるが、基本的に振り飛車で挑むのが一番勝算があると思った相手に振り飛車をぶつけるようにしている。
しかし4回戦では金無双崩しに手こずって敗れるという経験値の低さが露呈する対局になってしまった。
放送局で「毎期一回は飛車を振るというのを今のところは継続しています」と言ったが、あまり成果が出ていないように感じている。
前期1回戦でも振り飛車側をもって敗北しており、勝ったのは前々期11回戦の一回きり。
後手振り飛車勝率0%である。
(サンプル数3だけど、3年だからねえ)
そもそも毎期一回は飛車を振る、をやり始めたのは

こういうことで、特にキメ対策のモチベ低下は今期11回戦(島ノ葉尚戦)の感じからしてもうその域まで到達していそうではあるので来期以降はある程度自由に行動することも考えたい。
野良ではたまに一間飛車やノーマル中飛車などを採用して勝ったり負けたりしているので完全に実力が落ちるというわけでもなく難しいところだが、別に「縛りプレイ」ではないので、振り飛車を採用することが舐めプになるレベルで差が出始めたと判断したら躊躇なく採用をストップしたい。
敗局から考えたことはこんな具合。
今期昇級できなかったのは残念だが、そうなってしまった以上敗者にできることは次の勝利に向けて動くことのみ。
来期圧倒的アドバンテージがあるのは順位だ。
残留組のなかでは最高順位なのでA3からの降級組以外には昇級争いで優位に立てる。降級組が参戦しなければさらに上の順位ということもあり得るだろう。
今期はB2一斉対局やB3の接戦具合などを見て順位の大切さはしっかり学んだ。来期はこの武器をありがたく使わせてもらう。
念願の1位昇級を目指す上でも好条件だ。
さて、来期は再戦ラッシュとなり 作戦面などで まだ経験したことのない状況のなかを手探りで進めることになるだろう。またB級2組からも再戦が楽しみなプレイヤーが上がってくる。
順位だなんだと宣ったが、何はともあれまずは1局ずつ勝ちを重ねていくことが重要。
そのためにもオフのあいだにしっかり力を蓄えます。それじゃあ。