#16 お月さまが教えてくれたこと

(4歳の娘が15歳になった時に渡す手紙です)

「今日、月がいないね!」

夜、一緒に近所のスーパーに買い物に行った帰り、君はこんなことを言いました。

「雲に隠れて、見えないんだね」と私が言う。すると

「雲には顔があるんだ。お月さまのこと見ているのかもね」と君は言いました。

まず、大人の私には、月が見えないなんて全く認識していませんでした。言われて空を見上げればすぐに気づくことなのに、君に言われるまで全く気にしていませんでした。

子ども(君)の見ている世界、発言は、私にいつも素晴らしい気づきをもたらしてくれます。15歳になった君も、お月さまが見えないって思うことがあるかな。

いつもそこにいるのに、今日はいない。いつもそこにいる存在こそ大切なのに、いなくなっても気づいていないなんて、ひどい奴ですよね。

君の毎日遊んでいる友達がいなくなったら、すぐに気づくけど、いつも声をかけてくれる近所の人のことって忘れていたりする。さらに言えば、一人暮らしをした時に、いつも「いってらっしゃい」と言ってくれる人がいる幸せに気づけたりする。

なくなって気づけば良い方で、ともすれば、なくなっても気づいていないかもしれない。そんな鈍感な人間にはなりたくないものです。

それに「雲に顔があり、お月さまを見ている」とは、よくわからないような言葉だけど、4歳の君が見る絵本の世界の雲は、どれも顔がある。そして、人間だったり、太陽と会話をしていたりする。

そう考えれば、君の発言は何も不思議なことはない。いつも見ている世界で、現実の世界を考えてみただけです。

15歳の君は、様々な人に対して、おかしなこと言っているな、普通じゃないな、と思うことがあるでしょう。けれども、それは自分が相手のあたりまえや考え方を理解できていないだけ。自分が100%正しいなんてありえない、と私は思います。

現在の君にとっての普通は、15年間、生きてきた中の普通です。
4歳の時の君は、4年間の普通です。

そう考えたら、まだ自分が知らないことがありそうじゃない?

私は40歳になっても、そう思って生きている予定です。



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