その選択肢を持たなければ、対岸の火さえも見ることはない。「気がついた時」には世界は一変している。
「少女ゾンビ」 ヒロモト森一
PAKU★★★★★ POKU★★★★★ BLACK★★★☆☆
昭和100年というパラレルワールドが舞台。出版されたのが2010年で、その頃の情報伝達が大変リアルに描かれている。
世界は少しずつゾンビによって侵略されていっているのだが、情報は隠され、ねじ曲げられ、すぐそこに迫っているはずの恐怖に誰一人と気がつかない。そもそも、「ゾンビ」という選択肢を持たない人たちは、ゾンビを普通に逮捕し、噛まれても気にしない。そいういったことにより、ゾンビは着実に数を増やし、いつかその事実は爆発的なゾンビ人口増加とともに公衆に晒される。
今回読み返してみて、コロナに似ているとも思った。コロナがゾンビに変わっただけで、人々の危機感はとてもリアルに描かれている。
物語は一つの家族が主に描かれているが、それ以外にも日本の対応など、人間模様がとてもしっかり描かれている。320ページで1冊だけだが、展開もよく、一気読める。
「絵が汚い」という人もいるかもしれない。独特の絵柄で、2色刷りのためさらに雰囲気が助長される。帯に「これぞゾンビ版“不思議の国のアリス“だ!!」と書かれているが、そう感じる雰囲気はある。しかし、アリス的な要素はない。不思議な作品。
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